機械工学科特別講義 「高炉を蘇らせた挑戦者たち」

         −NHKプロジェクトXに見る実践的プラントエンジニアリング―

                         2003102113301500 工学部C3302教室

                    講師 (元)神戸製鋼所  菅原孝幸(MJ)氏

 機械工学科の学生を対象とした講義であったが、機械クラブのOBも傍聴が許され、進藤、坂口名誉教授以下17名が参加した。冒頭、富田教授から本講義の意義および講師の紹介があったが、最近の学生はNHKプロジェクトXを殆ど見ていないと補足された。菅原氏はNHKの放映で「自分はてっきり有名人になっているものと思っていたのにガッカリした」と笑いをさそい、なごやかなムードで講義が始まった。

 内容は、KTC機関誌のNo.57に掲載されているので省略するが、予想外の大地震でどこがどの程度やられているか分からない状態の中で、損傷個所を的確に抽出し、資材・人材・エネルギーが断絶した環境下で、震災後僅か75日で高炉を復旧させた世界でも例のないプラントエンジニアリングドラマである。
 緊急工事の実施にあたり確かな情報に基づく的確な判断が求められるが、工事を絶対必要なものだけに絞込み、パート法による工程表が作成された。しかし、試運転段階になって、当初確認出来なかった損傷を次々と発見するが、これを知恵と執念で乗り切り予定より13日早く無事火入れ式が挙行された。神のご加護もあったと謙遜されたが、例えば伸縮管のベロー部からの漏洩が発見されるが、ステンレス薄板をプレスして作る正規のものは直ぐには入手不可能であるので、曲げたガス管を3分割してベロー部を製作する等、神鋼のエンジニアリング力のすごさを見せつけた。
 最後に、自分の豊富な経験からエンジニアのあり方、学校と実社会の違いについて話されたが、我々社会人にとっても参考となる内容であった。講義終了時、NHK膳場貴子アナウンサーのサイン、本人とのツーショット写真が紹介され、ドーと笑い声でお開きとなった。     

(追記)

 会場で、95年1月17日震災直後の神戸市のパノラマ写真が回覧された。神戸製鋼所の高炉とその周辺の建物を中心に、東灘・灘の市街地のビル倒壊、黒煙が数箇所から上がっている写真で見応えがあった。この写真は大西道一氏(MD)が自宅(鶴甲団地4階)から撮影されたものである。 

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