=機械クラブ講演会「若手教員は今」
   開催日:平成16年12月11日(土)13:30〜15:50

「若手教員は今」と題した恒例の講演会が開催され、 下記両先生の研究活動ならびに当該分野の研究動向が 紹介されました。参加者は講師も含めて22名でした。

◆講演T.高エネルギー分光で見た金属ナノ構造材料の量子物性 <助教授 田中章順>
講演要旨: ナノメータスケールのサイズを持つ物質では,量子力学的効果が顕在化することにより,巨視的 な物質では見出せない物性(量子物性)及びそれらに 起因した新奇な機能性が発現する。
 現在我々の研究グ ループでは,空間的にコヒーレント制御された金属及 び半導体のナノ構造材料を合成し,真空紫外線から軟 X線領域の光を用いたスペクトルスコピー(高エネル ギー分光学的手法)により,それらに発現する電子状 態ならびに量子物性の研究を行っている。
 特に我々の 中心的なプローブである,光電子分光法を用いること により,材料の物性及び機能性に支配的に寄与するフ ェルミレベル近傍の電子構造を直接的に評価できるこ とのみならず,近年我々が建設・開発を行っている, フェムト秒超短パルスレーザを用いた時間分解2光電 子分光により,超高速の電子ダイナミクスを直接的に 観測できる。
 本講演では,新規高次光電子機能性材料 の設計指針を構築することを念頭に置いた,放射光, 実験室光源,超短パルスレーザを用いた光電子分光に 代表される高エネルギー分光学的手法による金属ナノ 構造体の量子物性に関する最近の研究例を紹介する。

◆講演U.固体力学研究の広がりと深まり <助教授 長谷部忠司>
講演要旨: 固体力学関連の研究には,材料のミクロな 変形理論からものつくりプロセスの開発に至る広範囲 な課題が含まれる。 本講演では,「インクリメンタルハ ンマリングによるフレキシブル板材成形法の開発」お よび「場の理論に基づく各種材料のマルチスケール塑 性モデリング手法の確立」という,固体力学分野にお いて両極端に位置する2つ課題に対する最新の研究成 果を例にとり,関連分野における研究の広がりと深ま りについて私見を紹介する。
 前者は,従来の総型を用 いたプレス成形とは異なる昔ながらの”手板金”加工 の機械化に成功した例である。講演では,これまで熟 練者の「経験と勘」に支配されると考えられてきたそ の方法論を,いかにして簡単な原理原則に基づいて解 明し,全く新たな成形法として再開発したか,その経 緯を紹介する。
 後者は,塑性理論研究者の長年の夢で ある,ミクロとマクロを繋ぐ統一的な変形・破壊理論 の構築に対する全く新しいアプローチである。ここで は,達成への道のりは遠いと一般には考えられている 同課題に対し,数年である一定の“解”を提示するた めに講演者が見出した独自の観点について紹介する。