KTC機械クラブ総会講演会(概要)
 
日 時:平成19年3月23日(金)17:10〜18:10
場 所:兵庫県私学会館
講 師:本田技研工業株式会社 社友 (元専務取締役) 萩野 道義氏(MM)
演 題:「HONDAの先進技術とそのDNA」
出席者:約80名(学生が多数参加)

講演概要
 HONDAの先進技術は,創業者本田宗一郎のDNAといえる“チャレンジスピリット”(高い目標,先進創造など),“一人一人が主役であるという意識” (喜びの創造,熱意・ひたむきな努力など),“自由闊達な企業風土”(共通の目標,平等な仲間意識など)によって 生み出されてきたといえるだろう.このような環境によるものか,中途採用者の社員が大勢いて活躍している. 事業内容は移動体(車・オートバイ・ロボットなど)だけにとどまらず,環境・安全,エネルギー,食料・水と多岐に わたっている.ここではこれらの分野における先進技術のうち,特筆すべき数件に絞って紹介する:
 ディーゼルエンジンの「うるさい」,「走らない」は既にクリアされているが,「汚い」は未解決であった.HONDAはガ ソリンエンジンに匹敵するレベルにまで排ガスをクリーンにできる画期的なディーゼルエンジン用NOx触媒を開発した. この触媒は,内部で生成されたアンモニアによる還元反応を利用して,窒素酸化物(NOx)を窒素に浄化する画期的なシス テムである(当日は,この触媒による反応メカニズムが動画で紹介された).
 燃料電池車は究極の自動車であると考えている.HONDAでは80年代始めから技術開発を進めてきたが,このたび燃料電池 を車の中にレイアウトできるレベルにまで小形化することに成功した.その意味で燃料電池車は実用レベルに達した,と いうことができるであろう.
特に従来の燃料電池スタックが水素や生成された水を水平に流す方式であったのに対して、新しいコンセプトでは垂直に 流す方式を採用しており,重力を利用することで,高効率化の鍵となる生成水の排出性を大幅に向上させ、小型高出力化 を実現することができた。また、熱容量が小さくなった結果,それだけ暖まりやすくなり,低温での始動性が大幅に向上した. ただし,広く普及させるためには,燃料電池のコストを現在の1/100程度にする必要がある,水素ステーションの設置が必 要である,信頼性をさらに高める必要がある等,解決すべき課題も多い.
 「Honda Jet」は創造者の夢であった.1986年に小型ジェット機の研究を開始,その後,研究開発を重ね,自社製ターボフ ァンエンジンを搭載した小型ビジネスジェット実験機「Honda Jet」を開発した.「Honda Jet」はエンジンを主翼上面の最 適位置に配置するというユニークな構造となっているが,これはコンピュータシミュレーションを駆使することによって, 見いだされたものである.このレイアウトにより,胴体内容積を大幅に拡大することができた.
今後さらに実機レベルでのシステム,性能や操縦安定性を確認したうえで,2010年頃にはデリバリーを開始する予定である.

HondaJet

学生も参加して講演を拝聴