平成19年度シニア活性部会活動報告
−講演会:「世界の環境ビジネス」−

 
平成19年度のシニア活性部会はML長澤忠彦氏を講師に招き、「世界の環境ビジネス」についての講演会を開催した。20名の方々のご参加を頂き、 質疑応答および懇親会も実施した。





日 時:H19年7月19日(木) 16:00−20:00
場 所
 ・講演会(16:00−18:00)…神戸クリスタルタワー 10階 「兵庫ボランタリープラザ」
 ・懇親会(18:20−20:00)…「神戸麦酒館」
参加者:20名
講演要旨
 長澤忠彦氏は昨年(H18年)11月、日本の外務省が実施する「環境ビジネスに関する巡回講座」の講師として、(財)太平洋人材 交流センター(PREX)からロシアに派遣された。
 この講座は「大統領プログラム」と呼ばれ、1997年クラスノヤルスクでの橋本-エリツィン会談によって産まれた日露経済・技術協 力の一環としての企業経営者養成計画で、これまでに財務や経営関係の多くの講座が開かれ、ロシア各地で多数のビジネスマンが受講し、 訪日研修も行われてきた。
 環境に関するテーマで行われるのは今回が初めてとのことで、特に、ロシア企業の環境対策実施及び日本の地 球温暖化防止CO2削減目標達成にあたって、日本で培われた環境・エネルギー技術が役に立つよう、また、「京都議定書」に定められ た「共同実施」や「排出権取引」の仕組みについての理解が深まるよう教育をすることになった。
 モスクワ、クラスノヤルスク、エカテ リンブルグでそれぞれ1週間、各40名の受講者を相手に講義が行われた。講義のようすについてはこちらをご覧 頂きたい.
 ロシアには一人で行ってくれということで、現地では独立非営利法人日本センターを事務局として、通訳はモスクワ在住の有能な男性で あった。
 受講生の職業や所属は千差万別であり、環境ビジネスへの取り組みや関心の分野も異なっていたが、全員きわめて熱心で、講義でもほ とんど全員が質問のため手を挙げるという状況であった。ほとんどの質問は講義内容に関するものであったが、中には温室効果ガスの排 出権取引に関して、「地球温暖化などというのは、排出権取引ビジネスで儲けようという人たちが考え出した虚構ではないのか」という 質問には驚かされた。後で、ロシアの一般の人の捉えかただとわかったが、まだ11月というのに毎日―20℃以下と寒い地域の人びと が、地球が温暖化しつつあると言われても、なかなか想像できないのは無理がないことかもしれない。しかし、製造業をはじめ多くの企 業が、京都メカニズムを活用して、日本など先進諸国の資金や技術を導入して、生産工程やエネルギー設備の近代化をはかるとともに温 室効果ガスや汚染物質の削減をはかりたいという意欲はきわめて強い。また、最後に実施したグループ別のプレゼンテーションも、 CO2排出権取引の制度やルール、また省エネ実施のための日本のESCO事業に関する講義内容をよく理解し、さらに応用した上でパ ワーポイントでまとめた素晴らしいものであった。     ロシアの経済成長率(棒グラフ)と原油価格(折れ線)の推移
 今年2月に実施された訪日研修では、巡回講座受講生のなかから選抜された19名が参加し、東京と大阪の企業を中心に研修が行われた 。参加者それぞれの企業や所属機関に関連する環境技術やビジネスの情報のみならず、日本の廃棄物対策や省エネルギー推進の仕組みも精 力的に吸収しようと全員熱心であった。
 受講生たちは帰国後さっそく、地元の州や市のごみ収集・リサイクルシステムの構築の仕事等に協力して取り組んでいるということである。 クラスノヤルスクでは、授業の合間に地元の白樺林の中にある「岩柱」と呼ばれる奇岩に案内されたが、雪の中のウォーキングやロッククラ イミングなど健康増進の恰好の場となっており、その奥にはタイガの森が果てしなく続いている。また、ここエニセイ川の上流には世界最大 の水力発電所が建設され、そのダムに何100万m3の流木が滞積し、そのバイオマスへの利用が最大の課題であるとのことである。
 ロシアは1991年の体制変革のあと経済の混乱と後退を余儀なくされたが、21世紀に入って目覚しい回復を続けている。急激な経済成 長によって環境問題が起こってから対策を行うというのではなく、あらかじめ適切な環境影響評価を行い、環境対策を行いつつ進めることが 肝要であろう。そのためには日本の高度経済成長時代の苦い経験と、そこで生み出された優れた環境技術が必ずや役に立つであろう。
 講演のなかで、長澤氏から「このほか、(財)地球環境センターで実施するタイでの河川浄化支援プロジェクト、マレーシアでの廃棄物処理・リサイ クル研究プロジェクトでも活動している」との報告があった。
質疑応答
 本日の部会の中に、京都メカニズムの「CDM」(途上国でのCO2削減による排出権の取得)の実務を経験したメンバーがおられたこともあり、 ロシアとの「共同実施」や「排出権取引」の可能性、さらには日本のCO2削減目標達成の可能性などについて熱心に質疑が行われた。
永島会長講評
 当初講演の演題からだけでは想像できなかったが、日本の国が実施するプロジェクトで、一人で厳寒のロシアまで出かけ、ロシアのビジネスマン を相手に日本の環境対策技術やCO2対策の仕組みをレクチャーするという大変な仕事を成し遂げられたという講演をきいて感心するとともに敬意を表したい。

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