平成19年度KTC機械クラブ 六甲祭協賛講演会(概要報告)
 開催年月日 : 平成19年11月11日(日)  
場所 : 六甲台第T学舎 2階232教室 

恒例の六甲祭協賛講演会が六甲祭で賑わう六甲台学舎において,開催された。
今年は初めての 試みとして,講演会に先立ち,学生の自主活動(学生フォーミュラチームとレスキューロボットチーム )の 活動報告も行われ,参加者の興味を惹いた。これらの概要を以下に示す。

◆講演会(「機械工学先進研究」紹介)
○講演題目:「原子間力顕微鏡および高輝度放射光を用い
    た金属疲労の研究」
○講   師:中井 善一 教授 (機械工学専攻)
○講演要旨
金属材料の疲労が工学的な問題として認識され, 研究されるようになって200年近く経つが,今なお,疲労を原因とする事故がしばし ば起こっている.疲労破壊事故を防止するためには,疲労破壊が生じるメカニズムを 明らかにする必要があるが,疲労破壊に影響を及ぼす因子が極めて多いために,これ までの膨大な研究にもかかわらず,依然として解明されていない問題が多く残されて いる.これまでも,各種の顕微鏡などの新たな観察手段が開発されることによって, 疲労研究にブレークスルーがもたらされたが,私たちの研究室では,近年開発された 二つの観察手法を駆使して疲労研究に取り組んでいる.
その一つが走査型プローブ顕微鏡による疲労き裂発生過程の観察とそれによるき裂発 生寿命の高精度な予測である.プローブ顕微鏡は,原子間力顕微鏡,磁気力顕微鏡, トンネル顕微鏡などの 総称であるが,その起源は,1982年にIBMのBinningとRohrerが 発明した走査型トンネル顕微鏡である.この功績により彼らは1986年にノーベル物理 学賞を受賞した.
走査型プローブ顕微 鏡の特徴は,固体表面の形状を原子レベルの分解能で三次元的に 観察することができることである.私たちの研究室では,1993年にこれを導入して, 世界に先駆けて,金属表面における疲労き裂発生過程の観察に利用してきた.これに よって観察された疲労すべり帯の例を図1に示す.従来の顕微鏡では見られなかった疲 労すべり帯の形状が三次元的に明瞭に示されている.その後,疲労過程中のすべり帯 形状の変化を観察することによって,いつ,どのすべり帯よりき裂が発生するかを予 測することができるようになった.
もう一つの観察手法は, 高輝度放射光SPring-8を用いて金属の内部組織を観察するも のである.SPring-8は,兵庫県の播磨科学公園都市に建設され,1997年に供用を開始 された世界で最も強力な放射光を発生する施設である.高輝度の放射光を用いること によって,大きな金属試料の内部構造を高分解能で観察することが可能になった.そ の一例を図2に示す.圧延方向に細長く連なった介在物を観察することができる.破断 寿命が108回を超える超長寿命疲労域では,き裂は材料内部の介在物から発生すること が分かっているため,SPring-8を用いたCT法による内部組織の観察は,そのようなき 裂発生と成長機構の解明に威力を発揮するものと考えられる.

図1.原子間力顕微鏡 で観察された疲労すべり帯像

図2.高輝度放射光CT法によって観察された介在物


◆「学生の自主活動」報告
レスキューロボットチーム“六甲おろし”の活動については,学部4年平松敏史君が, 学生フォーミュラチームの活動については,博士課程前期課程1年の竹内耕助君が報告した。 持ち時間はそれぞれ15分間であったが,両君とも活動の現状,大会準備にまつわる苦労話, 過去の大会成績,活動するうえでの問題点等を,動画や実機のデモを活用して十分にアピール していたようであった。

平松 敏史 君

竹内 耕助 君