<平成19年度KTC機械クラブ>
「若手研究者はいま」講演会(報告)
 開催年月日 : 平成19年12月8日(土) 15:00-17:00 
 開 催 場 所  : 工学部5W-301講義室 

第2回「機械クラブ理事・代表会議」に引き続いて,標記講演会が開催され,約30名の機械クラブ会員と教職員が 出席して拝聴した。 また,講演会終了後は工学部食堂横のAMEC3において,和やかな雰囲気のもとで懇親会が開催された。

◆講演T:設計知識・設計意図のマネージメント
            (講師:神戸大学大学院 工学専攻科 機械工学専攻 妻屋 彰 准教授)
講演要旨
 設計開発期間短縮や協調設計の円滑化,技術やノウハウの継承を目的とした設計情報の知識化のためには,設計者の意図などの 設計情報の背景にある情報も含めて知識化すること,知識として何を用意するかだけでなく,どのように利用するかも考慮する必 要がある.
本講演では,このような考えの下で行った2件の研究を紹介した.「フィードバック設計手法に関する基礎検討」では,設計者の 意思決定過程が比較的わかりやすい問題解決のフィードバックに注目し,LSI設計を例題にフィードバックアクションの分析・整理 を行うとともに,解決案決定に考慮する項目を調査して評価項目とし,重要度を重みとして評価する評価手法によって,問題や目的 毎に有効なフィードバックアクション案を提示できることを示した.
また,「設計者の意図を反映するCADの研究」では,設計行為中に考慮 される属性情報や設計者の意図を3次元CADシステムの中で統合的に取り扱うことを目指し,幾何情報,属性情報とそれらの変更に対 するシステムのリアクションを規定するシステム動作情報を整合的に記述・利用できる方法を構築し,ケーススタディによって設計 変更時の対応や設計進行時の情報の継承の点での有効性を示した.

◆講演U:ノズル内キャビテーションと液体噴流微粒化促進機構
            (講師:神戸大学大学院 工学専攻科 機械工学専攻 宋 明良 助教)
講演要旨
 近年、高効率・高性能な液体微粒化技術がさまざまな工業分野で求められている。例えば、ディーゼルエンジンの燃料噴射では 、有害物質である粒子状物質の生成を抑制するために液体燃料の微粒化が不可欠である。多様な液体微粒化装置のうち最も単純な 構造で多く使用されている方式は圧力式と呼ばれ、液体を高い噴射圧によりノズルから高速噴射して微粒化する。このノズル内で はキャビテーションが生じ、キャビテーションが液体噴流の微粒化を促進する可能性が示唆され、円筒形ノズル内キャビテーショ ン流れの可視化実験や数値計算が数多く試みられている。しかし、円筒形ノズル内キャビテーションの詳細挙動、キャビテーショ ンによる液体噴流の微粒化促進機構、キャビテーションの初生や発達の指標となる無次元数などはこれまで明らかにされていなか った。
そこでわれわれは、2次元ノズルを用いた高速度撮影・計測実験により、ノズル内キャビテーションと液体噴流の発達過程および 両者の関係、ならびにノズル内キャビテーションの詳細挙動を明らかにした。また、工夫を凝らした可視化撮影方法を考案するこ とによってノズル内キャビテーションと噴流の同時・高速度撮影を実現し、キャビテーションが発達した際に、キャビテーション 気泡群の放出・崩壊跡に生じる強い組織的な乱れが、噴流界面に液糸を形成させ、微粒化を促進することを初めて明らかにした。 更に、キャビテーション初生点における局所圧力を考慮した新しい無次元キャビテーション数を提案し、さまざまな幾何形状のノ ズル内キャビテーションを良好に予測できることを実証した。講演では以上の研究成果と,今後の課題などを紹介した。