平成20年度KTCM「先輩は語る」講演会(概要報告)
併催:坂口忠司研究奨励賞受賞者の成果発表

日 時:平成20年5月30日(金)15時10分〜16時40分
場 所:工学部LR−501教室
司 会:冨田佳宏教授(講演部会長)

講 演 会








講演題目 : 「生産技術の仕事−空調機編−」
講      師 : 高橋 孝幸 氏 PPM院25
講師略歴 :
 ・1988年3月 神戸大学工学部生産機械工学科卒業
 ・1990年3月 神戸大学大学院工学研究科修士課程修了
 ・1990年4月 ダイキン工業株式会社入社
          現在空調生産本部 生産技術部
          主任技師(課長職)
講演内容
 ダイキン工業のグローバル展開に始まり,ヒートポンプ式空調機器のしくみ,それを構成する機器の 構造,加工技術の進展に伴う高性能化の歴史などが紹介された.ヒートポンプシステムの原理の説明では,やさしく図解入りで説明して頂き, 大学1年生の学生からは「エアコンの仕組みがよくわかった」との感想も多く寄せられた.
 次に,現在取り組まれている仕事として, パワーモジュールなど電気部品の製造ラインの構築について講演頂いた.大事なのはムダを省くことであり,トヨタ方式を体系化した大野 耐一氏の言葉を引用しながら,その理念を説明いただいた.特に,生産性向上で大事なのは,人間の努力を無駄にしないことであると強調 され,工程管理においても“ルールが決められていること”,“ルールを決めた根拠が正しいこと”,“ルールが守られていること”と, 携わる人,意識が重要である,と伝えられた点が印象に残った.
 他にも,物の価値と価格の設定,人件費の考え方,企業での技術者の役割, 求められる人材,そして最後には学生時代にやっておいたら良いことまで伝えていただき,新入生の教育としても非常に有意義な講演をし ていただいた.

研 究 報 告(坂口忠司研究奨励賞受賞者による成果発表)
@“The 10th International Conference on the Mechanical Behavior of Materials
   (ICM10)” 参加報告

   …山中 晃徳 君(大学院自然科学研究科 博士課程後期課程2年)
平成19年5月27日から31日にかけて,韓国の釜山で開催されたICM10に参加いたしました.この会議は,金属材料や高分子材料などのさま ざまな材料の機械的特性評価に関する4年に一度開催される会議であり,各分野の第一線で活躍する研究者により複数のキーノート講演が行われ, のべ28カ国から482件の口頭発表およびポスター発表がなされました.私は「Phase-Field Modeling of Morphological Change of Ferrite during Decomposition of Austenite in Fe-C Alloy」という題目で口頭発表を行って参りました.発表では, 鉄鋼材料の製造工程中の組織形成過程および その組織がもたらす機械的特性を高精度に予測するための,材質予測シミュレーション手法を提案して参りました.この手法をさらに発展させるこ とにより,所望の力学特性を創成させる最適な組織形態および組織制御方法を探索でき,今後の鉄鋼材料の材料設計開発において必要不可欠な手法 になることが期待されています.最後になりましたが,今回の国際会議での発表に対しまして,機械クラブより坂口忠司研究奨励賞という大変名誉 ある賞を頂戴致しましたことに心より感謝いたします.これを励みにさらに勉学ならびに研究に打ち込んで参りたいと思います.
A“5th Joint ASME/JSME Fluids Engineering Conference (FEDSM2007,第5回日米機
   械学会流体工学会議)” 参加報告

   …阿部 覚 君 (大学院自然科学研究科 博士課程後期課程3年)
2007年7月30日から8月2日の日程で開催されたFEDSM2007での研究発表を報告した.まず開催都市であるサンディエゴ市を紹介した後, 総講演数や参加国などの学会の概要を説明した.続いて鉛直円管内水中単一二酸化炭素気泡の溶解過程を対象とした(1) 気泡径と管径 の比,(2) 液相レイノルズ数,(3) 液相に添加した界面活性剤が気泡の物質移動に及ぼす影響に関する研究発表の一部を説明した.実 験装置や測定方法について,また実験結果より鉛直円管内静止純水中を上昇する単一二酸化炭素気泡の物質移動係数が,気泡径と管径 の比の増加にともない低下することを明らかにしたことなどを説明した.最後に,助言として学部1年生への一言と,KTCMの皆様へのお 礼を述べ報告を終了した.
B“6th International Conference on Multiphase Flow (ICMF)” 参加報告
  …片岡 宏庸 君 (大学院工学研究科 博士課程後期課程1年)
2007年7月9日〜13日の期間にドイツのライプチヒで開催された第6回ICMFに参加いたしました.本会議は混相流に関する会議であり,3年に1度開催されています.今回の会議では600件近くの口頭発表とポスター発表が行われ,活発な議論が繰り広げられておりました. 私は ”Two-Phase Swirling Flow in a Gas-Liquid Separator”(気水分離器内旋回二相流に関する研究)について発表を行いました.本発表では,沸騰水型原子炉(BWR)の炉内構造物の一つである気水分離器を模擬した装置を用いて得られた旋回二相流に関する実験結果について発表しました.旋回二相流についての詳細な知見を得ることで,気水分離器の改良に貢献できると考えられます. 最後になりましたが,今回の私の発表に対して機械クラブより坂口忠司研究奨励賞という名誉ある賞を頂きましたことに深く感謝いたします.今後も研究と勉学に精進して参りたいと思います.