<平成20年度機械クラブ>
「若手研究者はいま」講演会(報告)
 開催年月日 : 平成20年12月6日(土) 16:00-17:00 
 開 催 場 所  : 工学部5W-301講義室 

第2回「機械クラブ理事・代表会議」に引き続いて,標記講演会が開催され,約30名の機械クラブ会員と教職員が 出席して拝聴した。 本講演会はこれまで2名の准教授,あるいは助教の先生が研究紹介をされる,というスタイルを取ってきたが, 今回は今年4月に機械工学専攻に着任されたばかりの,磯野教授が一人で講師を務められた.
 なお,講演会終了後は講師も参加さ れ,LANS BOX 2階の喫茶室において,和やかな雰囲気のもとで懇親会が開催された。

◆講演題目高機能マイクロマシン(MEMS) のためのナノエンジニアリング
◆講師:神戸大学大学院 工学専攻科 機械工学専攻 磯野 吉正 教授 <司会 : 白瀬 敬一 教授>
◆講演要旨
 MEMS(Micro Electro Mechanical Systems; 通称、マイクロマシン)の中でもナノ構造体を構成要素として持つNEMS(Nano Electro Mechanical Systems)は、高集積化、低消費電力化、およびナノ領域特有の物理特性を積極的に利用することが可能であり、新しい高機 能デバイスの実現が期待できる。今後、このようなナノデバイス開発を加速させていくためには、デバイスの信頼性確保のための「実験 ナノ力学」技術、低コストで実施可能な「ナノ加工」技術、ナノ物性を積極的に利用した新しい「応用デバイス」設計・開発技術、とい ったナノエンジニアリングの確立が重要である。このような観点の下、本講演では、著者がこれまで実施してきた、「ナノ材料物性評価 研究」、「走査型プローブナノリソグラフィ研究」、および「MEMS/NEMSデバイス開発研究」について紹介した。
 「ナノ材料物性評価試験」研究に関しては、シリコンナノワイヤに対するAFM内準静的曲げ試験結果や、静電駆動型ナノ材料引張試験用 MEMSデバイス(Electrostatic Actuated
NAno Tensile testing devices: EANAT)によるカーボンナノワイヤ(CNW)の物性評価に関する 研究を紹介した。とくに、後者の研究では、直径80nm〜150nmの CNWに対する単軸応力下での電気特性について報告し、同ナノワイヤが 機械量センサ用材料として有用であることを示した。 
 一方、NEMSの試作・開発を加速させるには、低コストで簡便なナノパターニング技術の開発も重要課題の一つである。本講演では、著 者がこれまで確立してきた走査型プローブナノリソグラフィ(Scanning Probe Nanolithography: SPNL)技術を紹介した。SPNLとは、電 解質表面上でプローブと基板表面間にバイアス電圧をかけながらプローブ走査を行うことで、ナノ領域で電解質分子の電気化学反応を引 き起こし、基板上にナノパターンを形成する技術である。講演では、本技術をベースにして開発した「熱駆動式パラレルSPNLシステム」 についても併せて報告した。
 最後に、上記のナノ物性研究とナノ加工研究で得られた知見に基づいて新しく開発した、「単電子トランジスタ」、「加速度センサ」、 および「静電駆動式MEMS共振器」といった応用デバ

 MEMS研究分野<画像をクリックすると拡大さ
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イスについて報告し、それらの機能と特性を示した。 今回報告した研究は、マイクロ・ナノ領域の物性、加工、応用デバイス開発に着目しながら、ナノエンジニアリングの学問体系化を目指して 実施してきたものである。今後は、得られた成果を次世代の「ものづくり」技術として、社会へ還元することを念頭に研究を推進して行きたいと考える。