平成25年度 機械工学専攻・機械クラブ共催
住友電気工業活ノ丹製作所」見学(報告)

 
毎年1回開催されている機械クラブの見学会が去る9月24日に実施された。 今年は、住友電気工業活ノ丹製作所を訪問し、住友電工焼結合金 伊丹工場(以下、焼結製品工場)、住友電工ハードメタル ダイヤ製品工場、同ツールエンジニアリングセンター(I−TEC)、SEIテクニカルトレーニングセンター(TTC)の計4施設を見学させていただいた後、角谷均殿(アドバンストマテリアル研究所グループ長)のご講演を頂いた。 本見学会は機械工学専攻との共催で実施しており、今回は教員・学生10名を含む、37名が参加した。
[報告者:見学部会 M(30) 尾野 守]

伊丹製作所の歴史、特長:富田邦洋執行役員様[M(26)]よりご説明
  昭和16年3月開所。面積は365千m2(11万坪)従業員は約2700名。 今回は住友電工ハードメタル(株)、住友電工焼結合金(株)を中心に見学させて頂いたが、 その他に、特殊線事業部(プレストレストコンクリート鋼線やタイヤ用スチールコード生産)、 (株)アライドテック(ヒートシンク、ヘビーメタルなどの機能性部品生産)、 半導体事業部(GaAs、InPなどの化合物半導体ウエハ生産)があり、 更に教育施設として、技術職向けのテクニカルアカデミーや住友電工全グループ向け施設のテクニカルトレーニングセンターがある。
工場見学:
  @焼結製品工場Aダイヤ製品工場Bツールエンジニアリングセンター(I−TEC)Cテクニカルトレーニングセンター(TTC)の4施設を見学。 いずれの施設も安全通路と作業通路が明確に区分され、5Sも行き届き、サンプル展示やパネル展示、液晶ディスプレイを用いて判りやすく説明頂いた。
@焼結製品工場: 住友電工焼結合金(株)の取り扱っている製品の90%以上が自動車用部品。 国内では伊丹と岡山県(高梁)の2拠点で生産され、伊丹工場は新技術の開発工場、岡山工場は量産工場(1拠点での生産量は世界トップクラス)の位置付けである。
焼結製品の製造工程は、配合→成形→焼結→後処理→検査 となっている。 成形工程では、多数のプレス装置を配置しており、反力制御を使用し、粉体の密度向上を図るCNCプレスも配置。 焼結工程では、プラネタリキャリアなどで、焼結と部品のロー付けを同時に行う”焼結ロー付け”技術も有する。 検査工程では、探傷試験があり、更に製品の評価装置として、オイルポンプ試験機(耐久評価用、性能評価用)があり、ユーザーと協業して、評価が行われていた。
Aダイヤ製品工場: 住友電工ハードメタル(株)の主力製品である切削工具に用いる、多結晶および単結晶ダイヤモンド(スミダイヤ、スミクリスタル)、立方晶窒化ホウ素(スミボロン)の素材生産を行っている。
B伊丹ツールエンジニアリングセンター(I−TEC): 住友電工ハードメタルのユーザ向けサービス、 特に研修(切削技術)−テストカット−技術相談(テクニカルサポート)の為に設立された施設(伊丹以外に国内4カ所 海外5カ所有り、世界で計10カ所)。 そのために各社の工作機械が多数設置されている。 昨年度は来訪者は合計で3225人、伊丹のみで約1000人が利用。加工実演では、ナノ多結晶ダイヤモンド工具(スミダイヤバインダレス)を用いて、超硬合金を極限の平滑加工(表面粗さ0.008ミクロン)する様子が紹介された。 新材料に対する工具の特性評価のために、新しい設備をタイムリーに導入する必要がある、とのご説明であった。
Cテクニカルトレーニングセンター(TTC): 2008年開所。3階建ての施設で、ものづくり教育や安全教育用施設。 これまでの座学中心の研修でなく、体験型の研修を行っている。屋上には太陽光パネルを設置。
ご講演:研究統轄本部 アドバンストマテリアル研究所 無機材料研究部 角谷 均 グループ長様
  バインダレス多結晶ダイヤモンド製品の開発を手がけてこられた角谷グループ長様のご講演を拝聴。
工業用ダイヤは1978年に開発した多結晶ダイヤモンド(スミダイヤ)から単結晶ダイヤモンド(スミクリスタル)へ進化し、 更に超高圧(14〜18GPa)、超高温(2100〜2300℃)の環境下でグラファイトからダイヤモンドへ直接変換焼結する技術開発により、 等方性を有するスミダイヤバインダレスを今回開発。
これまで、工具の耐久性と硬さは相反する特性であったが、このバインダレスはその両方を向上させることができる画期的な製品であり、 これを用いた「ナノ多結晶ダイヤモンド工具」は日刊工業新聞社の2012年「第55回十大新製品賞」において、「本賞」を受賞された。

懇親会
  懇親会は伊丹製作所社員倶楽部(GENKIクラブ)の3Fにて開催。 島一雄様、機械クラブ藪会長のご挨拶の後、見学会の話題、各人の近況など、見学の案内を務めていただいた神戸大学工学部出身の皆様を交え、 和気藹々と親交を深めることができた。

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以上の通り、平成25年度の機械クラブ見学会は関係各位のご協力のもと盛会裏に終了した。 今回、お世話になりました住友電気工業活ノ丹製作所の皆様に改めて、この場をお借りし深く感謝致します。