<平成26年度機械クラブ>
「若手研究者は今」講演会(報告)
 開催年月日 : 平成25年12月13日(土) 15:00-16:00 
 開 催 場 所  : 工学部5W-301講義室 

 菅野 公二 助教を講師に迎えて、恒例の「若手研究者は今」講演会が開催されました。 また、講演会終了後は講師も参加され、瀧川記念館で懇親会が開催されました。

◆講演:ナノ粒子を用いた金属ナノ構造の創製とセンサ応用
            (講師:神戸大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 菅野 公二 助教)
講演要旨
金属ナノ構造は、プラズモン共鳴現象により表面に巨大な光電場増強を発現するため、高感度分子検出センサへの応用が期待されています。このプラズモン共鳴特性を制御するための金属ナノ構造創製技術として、マイクロ電気機械システム援用ナノ粒子合成技術およびナノ粒子配列技術について概説するとともに、超高感度表面増強ラマン分光化学分析への応用研究について紹介しました。

講演ではまず始めに、ステンドグラスなどガラス工芸に用いられる金ナノ粒子について紹介しました。金ナノ粒子は、ガラスを赤色に着色するために古くから用いられてきました。数十nmの金ナノ粒子は緑色を強く散乱・吸収するため、散乱光は緑色、透過光は赤色となります。このような比較的身近な例を用いて、金ナノ粒子の特異的な光学特性を紹介しました。

次に、自身の研究分野であるMEMS(MicroElectroMechanical Systems:微小電気機械システム)について、その基盤技術や応用例を紹介しました。自動車やスマートフォンなどに搭載されている加速度センサやジャイロなど小型センサをはじめ、化学センサや医療診断デバイスなど多くのデバイスが開発されています。本研究では、このMEMS基盤技術を活用しています。

次に、金ナノ粒子を用いた金属ナノ構造の光学特性とその応用分野(高感度化学分析)について述べた後、工学的な利用に向けた研究課題を提示し、研究目的を説明しました。高感度化学分析は農薬や環境ホルモンなどの有害物質検出やセキュリティにおける危険物質検出、生命科学研究における生体分子検出等様々な分野に用いられます。これまでに、金ナノ粒子を用いたナノ構造作製技術に関する多くの研究がありますが、金ナノ粒子のサイズ・形状と配列を制御できないため、粒子の有する特性を有効に活用できていませんでした。本研究では、MEMS技術を援用して、課題に取り組んでいます。

本講演では3つの研究について紹介しました。(1)金ナノ粒子を作る:マイクロリアクタを用いて金ナノ粒子を均一なサイズ・形状で合成する、(2)金ナノ粒子を並べる:ナノ粒子を基板上に任意の構造に配列する、(3)金ナノ粒子を使う:金ナノ粒子表面増強ラマン分光による高感度化学分析、に関する研究です。配列した構造を用いることで、超高感度ラマン分光分析を可能としました。検出下限濃度は100 fMであり様々な分野への応用が期待されます。今後、研究成果の産業応用を進めるとともに、構築した基盤技術と機械要素を組み合わせた新しいセンサ技術構築を目指し研究を進めていきたいと思います。

最後に、本講演の機会を与えて下さったKTCM関係者の皆様に深く感謝申し上げます。



高感度化学分析のための直径100 nm金ナノ粒子を基板上に配列したナノ構造