<平成27年度機械クラブ>
「若手研究者は今」講演会(報告)
 開催年月日 : 平成27年12月12日(土) 15:00-16:00 
 開 催 場 所  : 工学部5W-301講義室 

池尾 直子 助教を講師に迎えて、恒例の「若手研究者は今」講演会が開催されました。 また、講演会終了後は工学会館 多目的ホールで懇親会が開催されました。

◆講演:金属製バイオマテリアルの創製〜テーラーメードインプラントと生体内分解性材料
            (講師:神戸大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 池尾 直子 助教)
講演要旨
現在、医療現場において、生体機能の補助、生体組織の固定、拡張には、縫合糸をはじめとして、種々の人工材料が使用されています。なかでも、金属材料は、人工関節、骨折部固定材や止血用クリップ、ステントなどの強度および靭性が求められるデバイスに多数適用されています。本講演では、バイオマテリアルの定義を含む医療用金属製デバイスおよびその問題点の紹介、そして生体内分解性医療用デバイスの開発に向けた研究について紹介させて頂きました。

骨折部固定用デバイスや金属製止血用クリップなどは、患部の治癒後は精密な画像診断を阻害したり、炎症反応を誘起したりします。このため、現在の医療現場では、生体内分解性を有するこれらのデバイスの開発が求められています。生体内分解性を示す材料として近年、マグネシウムが大きな注目を集めておりますが、純マグネシウム鋳造材は強度や延性に乏しく、これらのデバイスへの応用には、機械的性質の大きな改善が必要となります。これまで、生体内安全性の高い添加元素の添加および、その後の加工プロセスの最適化による内部組織制御により、マグネシウム合金の高延性化を実現しました。また、このような高延性化は、変形中に生じる動的回復によるものであることを示しました。さらに、神戸大学医学部と共同で実施した動物実験により、開発した材料の安全性が高く、また実際に止血が可能であることが明らかになりました。現在はこうした材料の実用化に加えて、他の医療用デバイスへの展開を目指して、材料の変形メカニズムの解明などを試みています。

最後になりましたが、本講演の機会を与えて下さったKTCM関係者の皆様に深く感謝申し上げます。