第8回「機械技術者生活を語る座談会」(報告)

文責:井宮・田中

(1)日時・場所

2025年12月6日(土) 15:50~17:15
神戸大学 瀧川記念館 会議室

(2)出席者 :56名

 
話題提供者M(35) 朝田 誠治 様
 学   生:29名 
機械クラブ会員:21名 
 教   員: 5名

(3)発表状況

 話題提供者(略歴)M(35) 朝田 誠治 様

 
1989年3月 神戸大学工学研究科機械工学専攻卒業
 同年4月三菱重工業(株)
神戸造船所 原子力プラント設計部 入社
 2009年3月神戸大学 工学研究科 学位(工学博士)取得

大学では、冨田研究室で弾塑性解析の研究を行い、三菱重工業に入社後は原子力発電機器の設計、保守に従事するとともに、日本機械学会 発電用設備規格委員会、日本高圧力技術協会、ASME Boiler & Pressure Vessel Code Committeeの委員、主査、議長を歴任。

朝田講師

 話 題:「原子炉容器の補修工法と設計」

 ・話題概要

  1.はじめに
 加圧水型炉(PWR: Pressurized Water Reactor)1次系の高温(約300℃)、高圧(15MPa)環境に適用できる材料として、高ニッケル合金の600合金が採用されたが、1次冷却水環境において応力腐食割れ(PWSCC: Primary Water Stress Corrosion Cracking)の感受性があり、実機で生じた事例もある。
 発表では、1次系機器の一つである原子炉容器を対象に、600合金のPWSCCに対する補修/保全とそれに係る設計について、事例(蓋用管台溶接部の補修、出口管台の内面クラッディング、炉内計装筒キャップ工法)を踏まえて紹介する。
  2. PWRのPWSCC
 PWSCC発生の最初の事例は、1991年9月にフランスで、その後、(2000/11)米国でも蓋用管台でのPWSCCが発生した。
国内では、大飯3号機(1991年運開)の原子炉容器蓋用管台において2004年5月4日に漏洩が認められた。(国内ではこの1件のみ)。
大飯3号機 原子炉容器蓋用管台溶接部での事例について、漏洩発生状況、検査結果、補修工法について詳しい説明があった。
  3.補修、予防保全の工法
 原子炉容器出入口管台内面クラッディング工法は,耐PWSCC 性に優れた690 合金を接液部となる管台とセーフエンドの異材継手部(600 合金溶接部)の内面にクラッディングし,“材料”によるPWSCC 発生要因を排除する工法であり,実プラントでは2004年1月四国電力伊方発電所1号機に初めて適用した。
炉内計装筒にPWSCCによる漏洩が発生した場合、又は検査により損傷が発見された場合に外面から補修を行う方法としてキャップ補修工法が開発され、発電設備検査協会や経済産業省で妥当性を検討済み。
690溶接金属のTIG溶接用の溶接材料についても従来材を改良した52TA溶材を開発した。

・参加した方からの質問、ご意見

  ・設計、検査など幅広く取り組んでおられるが、学生に向けて、学生時代に学んだ事柄の中で何が役立ったかコメント願いたい。
 (朝田)破壊評価にも基本的な材料力学の知見が役に立っている。最近は材力が必須科目で無くなったという話を聞いたことがあり、懸念している。
  ・発表頂いた内容は非常に複雑で、確率論的な面もある現象であるが、どういう点を考えて業務に取り組んでこられたのか。
 (朝田)会社の先輩、上司を見て5年先、10年先に自分がどうなっているべきかを考えて
自分自身の進む方向を選択すべき。
 (井宮)基礎を大切にして取り組んでこられたから、朝田様の今があると思われる。

(4)アンケート結果

(5)座談会 会場風景

写真1:座談会 会場風景

座談会会場風景

(6)親睦会

(出席者)会員・教員20名、学生21名 計41名

写真2:親睦会 会場風景(瀧川記念館、17:20~18:40)

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以  上