2025年度見学会 川崎重工業(株) 水素関連施設(報告)

毎年秋開催されている機械クラブの見学会を10月15日(水)午後、開催した。今年は、川崎重工業殿にご協力頂き、水素社会の実現をリードする水素サプライチェーンの構築に向けた取り組みを見学した。神戸工場にて、会社概要および事業所に関する説明を受けた後、水素のコジェネ施設見学、海外からの液体水素運搬・水素貯蔵施設を見学、質疑応答を実施した。偶然、実証船「すいそふろんてぃあ」が入港しているタイミングで、水素輸送~貯蔵~消費の水素サイクルの巨大さを肌身で実感することができた。
本見学会は機械工学専攻との共催で実施しており、今回は教授1名、学生12名、OB13名 計26名に参加頂き、盛況な見学会となった。

〔報告者:見学部会 M30 尾野守 M34藤井正章〕

集合写真 (神戸工場 特別室にて)

1.プレゼンテーション

見学に先立ち、神戸工場特別室にて、今回の見学内容を受講した。

1.川崎重工グループのビジネスと水素エネルギー事業に関する取り組み

社史:

川崎重工業は147年前の築地での「川崎築地造船所」設立(創業者は川崎正蔵氏)に始まる。その後事業拡大で、神戸に拠点を移し、1896年に「株式会社川崎造船所」が誕生、1939年に現在の「川崎重工業株式会社」へ社名変更され、現在に至る。

ビジネス:

  1. 船舶等の輸送用機器
  2. コジェネ等のエネルギー
  3. 産業用ロボット等の産業用設備
  4. モーターサイクル等のレジャー

の4事業よりなる。

受講風景(神戸工場 特別室にて)

水素利用は 2. コジェネ等のエネルギー の範疇で、川重グループビジョン2030にて、エネルギー・環境ソリューション分野で水素の技術検証→商用実証→本格商用化を2030年に達成し、その事業規模を6,000億円とすることが掲げられた。
この達成に向け、脱炭素に不可欠な水素の大量利用を目指して、水素に関し

  • 「つくる(肥料プラント等)」 
  • 「はこぶ(液化水素運搬船等)・ためる(液化水素タンク等)」
  • 「つかう(水素エンジンやガスタービン)」

のサプライチェーン全体の技術を一社で保有する世界で唯一の企業として脱炭素に貢献することを目標に取り組みが開始された。

エネルギーを取り巻く環境:

COP21パリ協定に基づき、Kawasaki地球環境ビジョン2050を2017年8月制定、2030年迄に自立的なカーボンニュートラルの実現すべく、川崎重工グループ全体のCO2排出量年間40万トンの3/4を占める国内で、自社製の水素発電を軸に、自社でゼロエミッション工場を実現する事とした。一方、世界情勢は、日本は2014年エネルギー基本計画に水素を盛り込むなど世界をリードしてきたが、最近はEU・北欧、米他の追い上げがスピードアップし、この対応として、運輸・製造、商社等の世界的なリーディングカンパニー142社で構成する“HydrogenCouncil”で、川崎重工は2022-2024年、共同議長に就任、水素を利用した新エネルギー移行に向けた共同のビジョン、長期目標を提唱するグルーバルイニシアティブの活動を行っている。その中で、水素導入ビジョン2050が発行され、市場規模(2.5兆ドル)雇用創出(世界で3,000万人)等が提唱された。世界では1749件の大型プロジェクトが提案され、510件は投資が決定するなど、世界的な水素利用の機運醸成にも大きく貢献されている。

サプライチェーンのターゲット:

以下、3点の取り組み通し、CO2の排出を抑制しながらエネルギーを安定供給するサイクルを目指している。

  1. 製造:資源国(豪州)で褐炭等を用いた製造(CCSでCO2を回収・貯留)
    日豪の政府・民間各社のパートナーと共に、NEDO助成もえて推進
  2. 水素輸送・貯蔵:液体水素運搬船~液体水素貯蔵タンク等
    ・液体水素運搬船“すいそふろんてぃあ”を建造。国際機関Maritime Safety Committeeの承認を得ることができ、運航を開始。
    ・液体水素貯蔵基地(運搬船からの液体水素受入~タンク貯蔵)として、“Hy touch神戸”を建設
  3. 水素利用:ガスタービンなどの産業用機器や、発電所等での利用を促進する技術開発の実施。
すいそ ふろんてぃあ 概要図
水素荷役基地 概要図

2021年12月以降、豪州→神戸の3往復オペレーションテストをトラブル無く終了、“すいそ ふろんてぃあ”はオマーン、UAE等にも回航し、グローバルな知名度向上にも大きく寄与している。

2.水素ガスタ-ビンの開発と実証プロジェクトへの取り組み

実証値ロケーション

水素サプリチェーンの実現に向け、水素利用アプリケーションの普及による水素需要の創出を目指し、大量の水素需要を創出可能なガスタービン発電の開発に取り組んでいる。

NEDO助成事業として、水素を燃料とする1MW級ガスタービン・コジェネレーションシステム(水素CGS)を用いて水素由来の電気・熱エネルギーを実際のコミュニティーへ供給し利活用する技術開発・実証を神戸市がポートアイランドに保有する旧ゴミ処理施設横に展開された。電気は国際展示場やゴミ処理場へ、熱は中央市民病院等に供給され、2022年に実証実験終了。設備改修され、効率向上の実証フェーズとなっている。

ガスタービンの燃焼器は、水素特有の「燃焼速度が速く、燃焼温度も高い」特性からバーナの焼損を防ぐべく、水噴射による低NOxを実現した「ウエット方式」を開発した。更に、燃焼効率向上を目指し、水を使わない微少火炎(Micromix燃焼)を用いたドライ方式の低NOX水素燃焼器が開発され、2020年5月世界初の実証実験に成功、改良開発によりNOx35ppm 天然ガス混焼を実現できた。

現在は商用化に向け、欧州での水素発電実証プロジェクト等に取り組まれている。

ドライ方式の開発

2.実証実験施設見学風景

1.神戸水素CGS実証設備(ポートアイランド内)

  2.Hy touch 神戸(神戸空港島)

写真奥が、液体水素運搬船“すいそふろんてぃあ” 写真右は液体水素タンク(2,500m

3.親睦会

昨年度に引き続き、親睦会を三ノ宮駅周辺の居酒屋で開催。体調不良等あり、見学会参加より若干減となったが、教授1、学生11名、KHIでお世話になったお二人(招待)、OB11名、合計25名の盛会。開催挨拶は井宮会長、会中盤ではKHI井上室長から学生へのメッセージ、締めは永島元会長に行って頂いた。見学会、各人の近況等々たくさんの話題で、親交を深めることができた。

謝辞

今回、注目が集まるプロジェクトで、超ご多忙の中、川崎重工業様にはプレゼンや実設備見学を快くお引き受け頂き、丁寧なご説明を頂きました。学生の参加者は、これからの社会生活・業務を進める上で、大変参考になったことを期待しております。私たちOBメンバーとしても、新たな知見を得ることができ、良い機会となったこと感謝しております。

エネルギーソリューション&マリンカンパニー営業本部理事 水素プロジェクト室長 井上健司様、同基幹職 小松正弥様、主任 菅谷典子様に対し、この場をお借りして深謝いたします。

以 上