平成19年7月1日
   機械工学専攻・機械クラブ共催
     講演会「赤川名誉教授は語る」(報告)

  
◆開催年月日: 平成19年5月11日(金)15:00〜16:00
◆講 演 題 目: 「機械工学科の発展と共に過ごした40年と気液二相流研究の楽しい思い出
             から」
◆場     所 : 教室棟5階 LR501
◆参加者総数: 約150名(機械クラブ関係者100名,機械工学専攻教職員18名,学外からの
          参加1名,学生約30名)

この特別講演会は,母校機械工学専攻と機械クラブにとって初の共催行事であったが,先生のご講演(講義)をぜひもう一度拝聴したいと 希望する機械クラブOBの方々が多数ご参加下さったおかげもあって,盛会裏に終了した. 講演概要は以下の通りであった.  なお,講演会に引き続いて,改装なった機械工学専攻棟の見学会と,懇親会が実施されたが,懇親会では赤川先生を囲んでの思い出話に花 が咲いた.懇親会の概要については,こちらをご覧頂きたい.
【講演概要】 京都帝国大学の航空工学科(敗戦により,応用物理学科に名称変更)を卒業したのが終戦の年であったため,航空工学 の知識を活かせる就職先など望むべくもなく, 就職先は神戸経済大学付属経営学専門部(コンピュータ関連業務)だった.その後,昭和24年に神戸大学が発足したのに伴って,工学部助 手となり,気液二相流研究を開始することとなったが,当時は研究費も実験装置も無く,その調達には苦労した.西代学舎に残されていた 焼け残りの部品を再生利用したり,企業に製作を依頼したりしたこともある.
 気液二相流研究の発展段階は,第T期(巨視的,純実験的研究),第U期(微視的,理論的研究),第V期(微細構造のより詳細な研究), 第W期(研究対象の多様化とコンピュータ・制御理論の活用)の4段階に分けて考えることができる. その時期・時期に応じて先進的な研究 テーマを発掘し,研究に取り組んだが,代表的なものしては「水循環脈動・流動不安定現象」,「フロンによる臨界圧の実現」,「並列管系中 の流量分配と流動の安定性」(機械学会賞受賞),「気液二相流の衝撃現象」などを挙げることができるであろう. これらの研究を推進するうえで,学生・若手研究者の協力は不可欠であり,その意味で,修士課程,博士課程を設置したことの意味は大き い.
 因みに工学部に修士課程の設置が決まったのは昭和38年12月末のことであり,学生はすべて就職が決まっていたため,地元の有力企業に協 力をお願いして,候補学生を大学院修士課程に派遣して頂くこととした.当時修士はまだ世の中に認知されていなかったが,数年経つとようすが変 わったので,社会情勢を見ながら機敏に行動することの重要性を痛感した次第である. また,博士課程については,学部の枠を越えた自然科学研究科という新しいスタイルを文部省に提案することにより,昭和56年に設置にこ ぎつけることができた.自然科学研究科というスタイルは博士課程設置を希望していた他大学にとっても参考になったように思う.
 なお,大阪大学石谷先生のご提案で,赤川研のスタッフ6名と石谷研のメンバーが中心となって開催した日米セミナー「二相流のダイナミ ックス」もいい思い出である.このセミナー開催を機に,この分野における日米の交流が盛んになった,といえるであろう.
 この度「気液二相流研究史」の執筆を終え,世に出すこととなったが,若手研究者にとって,何らかの参考になれば,と思ってまとめたも のである. 私のような年齢の者でも頑張っているのだから,皆さんも「自分もまだ頑張れるはず」という意識を持って頂きたい.