平成20年12月16日
   機械工学専攻・機械クラブ共催
     特別講演会「進藤明夫名誉教授は語る」(報告)

  
◆開催年月日: 平成20年10月10日(金)16:00〜17:30
◆講 演 題 目: 「回想:多軸応力試験装置の開発について」
◆場     所 : 神戸大学瀧川記念学術交流会館
◆参加者総数: 機械クラブ関係者,機械工学専攻教職員,学生 約120名

 昨年秋の叙勲で,進藤明夫名誉教授が受章されたのを記念し,昨年度に引き続いて2回目の「名誉教授は語る」 特別講演会が機械工学専攻・機械クラブ共催の形で開催された. 久しぶりに,先生のご講演(講義)を拝聴したOBも多かったのではないか,と思われる.講演概要は以下の通りであった.
 なお,講演会に先立って改装なった機械工学専攻棟の見学会が,また講演会の後進藤先生を囲んでの懇親会が実施された.懇親会 の概要については,こちらをご覧頂きたい.
【講演概要】
 進藤名誉教授は1955年頃から(神戸大学工学部で教鞭を執られる前から)多軸応力試験を行うことを考え始められた,とのこと である.本格的にそれを実行に移されるまでには15年以上かかったそうであるが,その後永年にわたり,本学で多軸応力試験を手がけて来られた.
 当日はご講演に先立ち,「本来ならば『何故多軸か』について,まず話すべきであるが,ここではこれまで手がけてきた『多軸応力試験装置』に 絞って解説することにする」とまず断られ,先生が手がけられた多様な試験装置について,装置の図や写真,作動系統図,演算回路などに基づき詳細に解説された.
 実験を開始された当初は装置の製作費の捻出にずいぶん苦労されたようであり,その話しを何度も繰り返された.また,廃品であった旋盤 ベッドを利用してその上に試験装置を組み上げ,軸力を掛けたところ,ベッドが曲がり,試験片にも曲げが作用してしまった,という失敗談 を話されたが,これも装置の調達がままならなかったことがその原因としてあったのだろう、と感じた.

 当日のご講演内容は
 T.静的多軸応力試験装置
   ・手動式二軸(引張+捩り)応力試験機
   ・アナログ制御自動記録式多軸応力試験
    装置
   ・ミニコン制御多軸応力試験装置
   ・パソコン制御多軸応力試験装置
 U.高速変形多軸応力試験装置
   ・油圧駆動動的多軸応力試験装置
   ・ホプキンソン棒方式衝撃二軸応力試験装
    置
   ・平板端面斜め衝撃試験装置

手動式二軸応力試験機
から成り,T.では制御系の高性能化に伴って,試験装置がより複雑,かつ精緻になるようすが詳しく解説された. なお、先生は常温のみ ならず,高温および低温下での多軸応力試験も実施されているが,特に高温の場合には,炉内での試験片の変位計測に苦労され,独自の工夫 をいろいろ凝らされたことを当日の資料から伺い知ることができた.
 また,U.ではより大きなひずみ速度を得るために,実験方式が“油圧駆動→ホプキンソン棒方式→斜め衝撃試験” へと変化する過程が 示された.
 門外漢には先生の永年にわたるご研究内容を十分理解できたとはいえないが、その幅広さと精緻さ・深さに改めて敬服した次第である。    <文責:MK回 藪 忠司>