○日 時:平成21年6月12日(金)8時50分〜10時20分
○場 所:工学部LR−501教室
○司 会:白瀬敬一教授(講演部会長)
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◆講 演 会 |
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講演題目 : 「鉄道車両部品の設計について」
講 師 : 乾 利一 氏 M(39)M院28
講師略歴 :
・1991年3月 神戸大学工学部機械工学科卒業
・1993年3月 神戸大学大学院工学研究科修士課程修了
・1993年4月 住友金属工業株式会社入社
現在交通産機品カンパニー製鋼所
輪軸製造部駆動装置技術室 室長
講演内容: 私は1993年に住友金属工業鰍ノ入社し、鉄道車両部品、クランクシャフトなどを製造している製鋼所
(大阪市此花区)に配属されました。 それ以来同事業所に勤務し、長年鉄道車両用駆動装置の設計に携わってきました。本日は新入生の
方へ講演ということで、私が担当している駆動装置の設計業務、製造工程、評価試験方法などを中心に紹
介するとともに、大学で勉強されることがどういう分野で必要であるかをご紹介させて頂きます。 |
さて、住友金属工業鰍ヘ鉄鋼メーカーであり、他鉄鋼メーカーと同様に薄板、厚板、パイプなどを主に製造しています。 その他、クラ
ンクシャフト、鉄道車両用部品などの製造も行っています。 パイプ、クランクシャフト、鉄道車両用部品などシェアが高い製品が有るこ
とが一つの特徴です。 鉄鋼製品の各製造工程では必要な学問知識は相違しますが、それぞれいろいろな分野の学問が必要であり、知識を
たくさんもっておくことが必要です。
設計業務の流れとしては、まず、ユーザーが車両新造を計画し、仕様書を各メーカーに発行するとともに見積依頼を実施します。 メー
カーは、仕様に対応できるような構造、構成を検討したのち、提案書と見積も合わせてユーザーに提案します。 |
駆 動 装 置
<画像をクリックすると拡大されます>> |
提案内容、見積により、
メーカーが選定され、内容が評価されれば採用されることになります。 その後、さらに詳細を検討、設計し、設計会議等でユーザー、メ
ーカー間で内容の確認、調整を実施していきます。
ユーザーのニーズに対応するとともに、競合他社との差を出すためには、いろいろな取組みが必要であり、技術データを採取・蓄積して
おくことが重要です。 設計内容が理解・評価され、新しい技術を採用してもらうためには、事前に検討・評価を十分実施しておく必要が
あります。 新しい技術として採用された例として歯車箱の材質を変更して軽量化した際の事例を紹介します。 実際にバラスト(線路上
に敷かれている石)が走行中に衝突し、衝撃を受けることを想定した試験を実施し、板厚を決定しました。 現在まで当時の基準を元に設
計をしていますが、特にトラブルは発生しておらず、当時の試験、評価は妥当であったと考えています。
製作内容が決定した後、製作にとりかかるため、製作図面ならびに製造方案を作成、発行していきます。 各部品は組立前に受け入れ検
査を実施し、品質に問題ないことを確認しますが、組立後、初回品は性能試験を実施し、性能に問題ないことを確認した後出荷します。
実際の車両と全く同じ条件では試験は困難ですので、より実機に近い条件での試験方法と測定方法、内容を考えることが必要です。 また、
出てきた結果をどのように評価するかが重要であり、いろいろな知識、発想が必要なところです。
最近のニーズとして、高信頼性・低騒音があげられます。 歯車、軸受構造を変更し、軸受への負担を小さくして信頼性を高め、さらに
騒音も低減した事例を紹介します。 本技術は設計面だけではなく、製造技術も確立し、開発した製品が思っていた性能を発揮することを
評価できる試験機ならびに試験方法が開発できたため、出来たものであり、新技術開発には、設計のみならず、製造・評価の改善も必要で
あるとともに、関係者と協力して業務を進めていく必要があります。
メーカーは製造、出荷すれば終わりでなく、使用が完了すなわち廃却されるまでの期間、安全に使用されるようにしていくことが必要で
す。 鉄道車両のメンテナンスはユーザー側で実施されることが多いのですが、ユーザーから改善要望等があれば、設計に
可能な限り取り入れていくことが重要な作業であります。
私は入社以来、鉄道車両用駆動装置の設計に携わり、業務を任せてもらってきました。 その結果、いろいろな経験(失敗も含め)をす
ることで自信をもてるようになってきました。 皆さんは、言われて行動を起こすような受け身にはならず、自分で考えて行動するよう心
がけて頂きたいと思います。 学生生活では、勉学だけでなく、私生活も含め充実させ、良い人間関係構築ができれば、将来に大いに役立
つので充実した学生生活を送ってください。
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研 究 報 告(坂口忠司研究奨励賞受賞者による成果発表)
“The Fourth International Conference on Multiscale Materials Modeling (MMM2008) ” 参加報告
…廣内 智之 君 (大学院工学研究科 博士課程前期課程2年) 平成20年10月
27日から31日にかけて、アメリカ フロリダ州のタラハシーで開催されたMMM2008に参加いたしました。 この国際会議は、材料のマルチスケ
ールモデルの構築と力学的特性評価に関わる世界的に権威ある会議で、世界中の研究者が参集して最新の研究成果を発信しました。 講演会
では、それぞれの分野を代表する研究者により基調講演が行われると共に、各テーマ別の8つのシンポジウムが設けられ、385件の口頭発表
とポスター発表がありました。 私は「New Computational Technique for Evaluating Deformation of Nano- crystalline Metal using
Phase Field Crystal Method」という講演題目で口頭発表を行って参りました。 発表では、現実的な時間スケールにおける原子レベルの
欠陥の挙動を予測するための材料変形シミュレーション手法を提案して参りました。 この手法をさらに発展させ、原子レベルでの欠陥の
挙動と金属材料の力学特性との関係を解明することにより、材料の更なる高機能化や新機能発現に関わる将来的な材料設計開発において
必要不可欠な手法になることが期待されます。 最後となりましたが、今回の国際会議での発表に対しまして、機械クラブより坂口忠司研究
奨励賞という大変名誉ある賞を頂きましたことを深謝いたします。 これを励みにより一層勉学ならびに研究に精励したいと存じます。
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