平成22年度機械クラブ 六甲祭協賛講演会(報告)
 開催年月日 : 平成22年11月13日(土)       
場所 : 六甲台本館第T学舎 2階232教室 

恒例の六甲祭協賛講演会が六甲祭で賑わう六甲台学舎において開催されました。参加者は約50名 でした。
今年も昨年同様,講演会に先立って,学生の自主活動(学生フォーミュラチーム,レスキューロボットチーム)の活動報告が 行われました。

                 
◆講演会…「機械工学先進研究」紹介 (司会:横小路 泰義 教授)
○講演題目:モノづくりを支える工作機械〜過去から現在、そして未来の姿を考える〜
○講   師:白瀬 敬一 教授 (工学研究科 機械工学専攻)>
○講演要旨
 工作機械は“機械をつくる母なる機械”と呼ばれ,ウィルキンソンの シリンダ中ぐり盤,旋盤の原型となったモズレーの工具送り台付き旋盤など,モノづくりの発展に寄与してきました。ウィルキンソンのシ リンダ中ぐり盤が,蒸気機関の実用化に大きく貢献したことはあまり知られていませんが,産業革命の成功と近代工業の発展は工作機械に よってもたらされました。
 また,1952年にアメリカのMITで紹介された世界初のNC工作機械(図1参照)は,軍用機の部品を加工する目的で開発されましたが,その 後の機械加工の自動化,高能率化,高精度化に大きく貢献しました。NC工作機械は時代の要請に応じて高機能化,高性能化され,マシニン グセンタやターニングセンタが誕生します。こうしたNC工作機械は,産業用ロボット,自動搬送装置,自動倉庫とともにコンピュータで制 御され,FAやFMSと呼ばれる工場の自動化・無人化が実現されました。
 さらにCAD,CAMと呼ばれる製造用ソフトウェアの登場で,設計や生産といった製造プロセスのIT化が加速しています。今ではコンピュー タで製品の3次元モデルを作成し,機械加工用のプログラムを作成し,加工結果をシミュレーションで確認できるようになりました。
 このように工作機械の過去から現在に至る進化の過程を振り返ると,工作機械のNC化と製造プロセスのIT化が,現 在のモノづくりや工場の自動化・無人化を支えていることが判ります。しかしながら,工場の自動化・無人化を実現するためには,NC工作 機械や産業用ロボット,自動搬送装置を制御するためのプログラムを作成しなければならず,多大な労力とコストを必要としています。ま た,プログラムが作成できなければ自動化・無人化が達成できないことから,作業者の能力に頼るセル生産方式が注目を集めています。
 作業者が工作機械やロボットに比べて優位な点は自律性と柔軟性にあり,作業を指示するためにプログラムを作成する必要がないことで す。そこで研究室では,自律性と柔軟性を備えた工作機械を実現することを目標に種々の研究に取り組んでいます。
○デジタル倣い加工(DCM:Digital Copy Milling)
 伝統的な倣い加工では,作成した模型の表面を

図1. MITで開発された世界 で最初のNC工作機械    
(精密工学会:生産システム便覧、コロナ社より)
工具が倣うように作業者が工作機械を操作しながら同じ形状の製品を加工していま した。この倣い加工の原理をコンピュータに組み込み,CADで作成した製品の3次元モデルを模型の代わりに用いて,3次元モデルと同 じ形状の製品を加工する手法を開発しました。この手法では,工作機械に製品の3次元モデルを提示すればよく,機械加工用のプログ ラムを作成する必要はありません。
○切削加工のインプロセス制御
 NC工作機械はプログラムで運転されるために,運転が始まると加工状況に応じて加工条件を修正するとか,加工トラブルを検出して未然 に対処するということができません。そこでプログラムを作成する必要のないデジタル倣い加工に,センサで検出した加工中の切削負荷を フィードバックするインプロセス制御を組み込みました。これにより,加工中に加工条件を修正して切削負荷を一定に保つ制御や,切削負 荷の異常に対して工具を退避させて折損を未然に防ぐ制御を実現しました。
○ボクセルモデルによる
  ヴァーチャルマシニング
  シミュレーション

 NC工作機械はプログラムで運転されるために,NC工作機械が加工状況を把握するということはありません。機械加工において自律性を発 揮させるためには,加工状況を予測しながらその予測結果に応じた制御が役立ちます。そこで,加工形状と切削力を同時に予測するシミュ レーションを開発しました。予測結果は実験による測定結果と良く一致しました。(図2参照


図2 加工形状と切削力の同時シミュレーション
◆「学生の自主活動」報告 (司会:白瀬 敬一 教授)
◇学生フォーミュラチーム(報告者:箱谷 淳 君)
 神戸大学学生フォーミュラチームFORTEKは,2010年9月7(火)〜11日(土)に静岡県エコパで開催された第8回全日本学生フォーミュラ 大会に参加しました。
 今大会で7回目の参加となります。前回は大会までに車両が完成せず,車検不通過で総合48位という結果に終わってしまいました. 今回は前回の汚名を返上すべく,「車検一発合格,全種目完走,総合15位以上」を目標に掲げ,プロジェクトを進めてまいりました. 様々な困難はあったものの,車両は無事7月中旬に初走行を果たし,大会直前まで調整や走行練習を行なうことができました.
 本大会では台風の接近による悪天候の中,競技が進行し例年以上にレースは荒れました. しかし,無事に全種目を走りきり総合 順位は14位,耐久走行部門では栄えある1位を獲得することができました.
 前回の失敗を乗り越え,当初の目標をすべて達成できたことは私たちのチームにとって大きな財産となりました. 今回の結果を 次の基盤としてさらなる躍進へと繋げていきたいと思います.
 最後になりましたがチーム発足時から,私どもへ温かいご支援を頂いておりますKTCMの皆様に心からお礼申し上げます. 本当に ありがとうございました.
 今後とも神戸大学学生フォーミュラチームをよろしくお願い申し上げます.
◇レスキューロボットチーム(報告者: 柏本 幸俊 君)
 神戸大学ロボット研究会“六甲おろし”は,8月7日(土),8日(日)に三宮サンボーホールで開催された第10回レスキューロボット コンテス トに参加しました。
今年は,「原点回帰」というコンセプトで,各機構全く異なる4機のロボットを製作しました。
 書類審査ではロボットの構想アイデアなどが高く評価され1位で通過できましたが,予選までにロボットを十分に作り込むことが できず,予選敗退という結果に終わりました。
 KTCMの皆様には日頃より“六甲おろし”チームの活動にご理解・ご援助していただきありがとうございます。来年は今年の雪辱を 晴らすべく,本選に出場しダミヤンを全体救出します。今後ともご支援よろしく お願いいたします。