令和1年度機械クラブ 「若手研究者は今」
講演会(報告)
 開催年月日 : 令和1年12月7日(土) 15:00-16:00       
開催場所 : 工学部C1-301 

西田 勇 助教を講師に迎えて、恒例の「若手研究者は今」講演会が開催されました. また、講演会終了後は工学会館 多目的ホールで親睦会が開催されました.

                 
◆講演:ものづくりのデジタル変革への取り組み
            (講師:神戸大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 西田 勇 助教)
講演内容
 機械加工において,現状では熟練者が加工プログラム(NCプログラム)を作成しなければならず,このことが機械加工の完全自動化の妨げになっている.また,NCプログラムの作成が熟練者に依存しているため,加工に使用する機械や加工順序は一意に決められており,柔軟性に富んだ生産システムが実現されているとは言い難い.わが国の製造業は少子高齢化による従事者の減少と熟練者の退職という問題に直面しており,人手不足の解消は喫緊の課題である.デジタル変革の著しい現状では,従来のような人に依存したやり方ではなく,コンピュータ技術を駆使した革新的なものづくり基盤技術が求められている.本講演では,大量生産と同等の効率で一品生産を可能にする自律生産システムのための基盤技術に関して,実用例を交えて最新の研究成果をご紹介いただいた.本講演では大きく3つのトピックをご紹介いただいた.
 1つめのトピックは,切削シミュレーションによる高精度・高効率化に関する取り組みである.これまでのエンドミル加工のシミュレーションでは工具1刃当りの送り量ごとの解析が行われていたが,工具微小回転量ごとに切削現象を表現できるシミュレーションを実現して,工具たわみの予測が可能になったことがご紹介された.また,予測結果に基づいた加工誤差の補正方法も併せてご紹介された.
 2つめのトピックは,加工プログラムの自動生成に関する取り組みである.従来から加工プログラムの作成を支援するCAMソフトウェアがあったが,加工領域や加工条件など多くの設定を使用者が行う必要があった.そこで,加工領域の自動抽出や加工条件の自動決定を実現することで,人手を介さずに加工プログラムを作成できる技術がご紹介された.
 3つめのトピックは,自律生産システムに関する取り組みである.加工プログラムの自動生成技術を適用することで,工程順序と加工時間の制約条件を緩和することができ,より柔軟な生産計画を立案することが可能となったことが説明された.
 最後に,研究成果を社会実装するために大学発ベンチャー「BESTOWS株式会社」を設立して活動していることが紹介された.
 ご講演の後の質疑応答では聴講された方々から多くの質問があり,活発な議論が行われた.大学発ベンチャーの事業拡大に関するアドバイスなどが聴講された方々から多くあった.