令和3年度機械クラブ 六甲祭協賛講演会(報告)
 開催年月日 : 令和3年11月13日(土)10:00-11:40       
開催場所 : Zoomによるオンライン開催 

恒例の六甲祭協賛講演会が開催されました.今年度はコロナ禍ということで,六甲祭の対面開催は中止となったが,六甲祭公式サイトでのオンライン開催となり,本講演会もオンラインにより開催されました.今年度は,横小路泰義教授を講師に迎えて,講演会を行いました.また,学生の自主活動であるレスキューロボットおよび学生フォーミュラの活動報告がありました.

                 
◆講演会…「機械工学先進研究」紹介 (司会:白瀬 敬一 教授)
○講演題目:体の中の流れの計算バイオメカニクス
○講  師: 横小路 泰義 教授
講演内容
 横小路泰義教授が現在取り組まれている産業用ロボットに関する最新の研究やロボット競技会(World Robotics Summit)について,ご講演をいただいた.
 はじめに,産業用ロボット単体は「半完結製品」であり,ある作業を実現するにはロボット単体だけでなく,各種周辺装置を含めたシステムとして組み上げ(インテグレーション)なければならず,そのためのコストはロボット本体のコストを大きく上回ることをご説明いただいた.このため,一旦組み上がったシ ステムは,長期間使い続けないと採算が合わず,これが中小企業や昨今の変種変量生産でロボットによる自動化が進まない理由であることをご説明いただいた.
 1つめのトピックでは,組立作業において,特殊な治具等を用いずとも組み立てられる汎用ハンドの研究についてご紹介いただいた.インテグレーションコストを削減するには,新たな生産要求に対して 迅速にかつ無駄なくシステムを立ち上げられる技術が必要であり,専用ハンドではなく汎用ハンドに着目している.その取り組みとして,対象物体の初期誤差範囲を吸収できる把持戦略の検討やビジョンセンサによる位置認識誤差を考慮したギアユニットの治具レス組み立て,物理シミュレーションを活用したシャフトの把持戦略をご紹介いただいた.
 2つめのトピックは,ロボット競技会(World Robotics Summit)についてご紹介いただいた.この競技会は経産省とNEDOが主催しており,ロボットの社会実装と研究開発を加速することを目的としている.競技概要と変遷がご紹介され,今年度実施された競技会の課題と参加チームの結果がご紹介された.競技会での課題でも,産業用ロボットには,迅速かつ無駄なく作業を始められるようにインテグレーションする必要があることが伝わる内容であった.大量生産の時代からマスカスタマイゼーションが求められる時代へ変化していく中で,産業用ロボットが柔軟に生産現場に適用していくことは必要不可欠であり,非常に興味深いご講演であった.
(文責:M56西田)

◆「学生の自主活動」報告
◇レスキューロボットチーム(ロボット研究会六甲おろし)(報告者:平井 啓裕)
  1. 新型コロナウイルスによる活動制限下での活動
     2020年度に引き続き2021年度に入っても新型コロナウイルスによる課外活動の制限が発出されていたため、Zoomを用いたオンライン会議によってメンバー同士の連絡や新入生の歓迎会を行っていました。7月以降は制限も緩和され対面にて活動を行う事が可能になっており、現在は「活動時間を1日3時間以内にすること」等の制限の下、5人のメンバーで週に1回集合日を設けて活動しています。
  2. レスキューロボットコンテスト20×21のオンライン開催
     レスキューロボットコンテストの予選会は例年対面で開催されますが、レスキューロボットコンテスト20×21(以下レスコン20×21)ではオンラインでのスタートアップミーティングが開催されました。スタートアップミーティングでは各団体の活動状況・ロボットの製作状況・本選に向けた活動方針等を報告しました。その後対面で開催される予定の本選に向けて準備・調整を行っていましたが、神戸市からの要請により本選の4日前に大会本選のオンライン開催が急遽決定しました。そのためロボットの動作を撮影した動画を提出し、それによって対面での競技を代替することとなりました。このような経緯によって本選もオンライン開催となり、大きな問題も無く無事に終了しました。我々のチームはレスキュー工学奨励賞をいただくことができました。
  3. 今後の活動予定
     今後の活動の中で重要視したいのは設備の刷新と技術の伝承になります。 設備の刷新についてですが、これは活動制限により出費がほとんど無かった昨年度分の予算と今年度の予算を合わせることで、導入費用の大きい機器を各種導入し既存の設備を更新することを意味します。また、これに伴って独自開発されていた部品の使用を停止し既製品を使用するよう変更します。魅力的な機器の導入により、製作活動がスムーズになるのは勿論のこと、新メンバー勧誘の材料の1つになればと思います。 技術の伝承についてですが、これはメンバーの人数不足から生じる技術の伝承不足をできるだけ減らすことを意味します。今年度はレスキューロボットコンテストがオンライン開催となってしまい会場での雰囲気や役割分担を経験してもらうことができなかったため、次回大会に向けて十分な準備を行っておくことが肝要になります。新メンバーの勧誘に力を入れてメンバーを増やすのと平行し、上回生が持っている技術を余すことなく伝えていけたらと思います。


◇学生フォーミュラチームFORTEK(報告者:村田 康貴)
 神戸大学学生フォーミュラチームFORTEKの2021年度活動内容をご報告いたします。
 学生フォーミュラは1981年にアメリカで始まり、日本では2003年から開催されています。世界では400校以上が参加し、日本では98校がエントリーしております。今年度大会は日本国内チームのみの参加となりましたが、2019年度日本大会では海外大学が27校参戦しました。このように海外からの参戦も盛んであり、国内最大級の学生モノづくり国際大会ともいえます。日本大会での競技内容は静的競技と動的競技の2種類に大別できます。静的競技は開発の論理性や知識を問う競技であり、動的競技は車両の運動性能を競うものです。マシンの運動性能だけでなく、チームの工業総合力が問われる点が特徴となっております。静的競技には3種目あり、マシンの設計プロセスについて審査するデザイン審査、マシンの製作コストを正確に計上し、かつコスト削減を競うコスト審査、マシンの販売戦略をプレゼンするプレゼンテーション審査に分けられます。今年度はコロナ禍での大会開催ということで、静的競技のみオンラインで開催されました。
 弊チームは第2回大会から参戦しており、2020年度は大会が中止となってしまいましたが、2019年度はチーム初の6位以内入賞となる5位を獲得致しました。21年度プロジェクトは1回生7名、2回生2名、3回生7名、4回生以上5名という体制で始まりました。工学部機械工学科に所属する学生が最も多いですが、電気電子工学科、建築学科、応用化学学科の他に、法学部や経済学部、経営学部など文系学部の学生も在籍しています。今年度からの新しい取り組みとしてマネジメント班を設立しました。将来的には渉外担当などチームマネジメントを担う存在になることを目標に設立しました。今までは弊チームに入部する学生は大きく分けると車好きもしくはモノづくり好きに限られていましたが、チームマネジメントに興味をもつ学生を取り込むことでチームの更なる拡大につながるとも考えています。
 2021Projectの目標は、大会がなくなりプロジェクトが中断してしまった2020Projectの目標を引き継ぐこととしました。2019年度に獲得した総合5位を更新すべく総合順位4位以内を目標に掲げました。
 2020年3月から11月まで対面での活動が禁止されました。6月に2020年度大会の中止が発表され、その後2021Projectが始動しました。顧問の先生方や工作技術センターの先生方のご協力もあり、11月からは対面での製作活動が可能となりました。3月には今年度車両の初走行となるシェイクダウンを実施しました。しかし、緊急事態宣言の発出などがあり5月から7月まで再度対面での活動が禁止されました。対面での活動が可能な時期も活動時間や活動人数には制限があります。活動自粛期間や制限の影響で製作活動が例年の半分以下となりました。その中でも確実にマシンを完成させるために、21年度の新規製作部品を最小限に抑えるという方針を取りました。20年度で製作したものをできるだけ流用し、企業様への製作依頼も積極的に行いました。人数や時間の制限に対応するために、活動スケジュールをシフト制にするなどの工夫をしました。限られた人数のみが製作を進めることになり、全体で進捗が見えにくくなるという問題が発生しました。そこで、製作管理フォームを導入しました。これはGoogleフォームを活用したもので、活動した部員がその日の活動を記入することで部全体に共有できるというものです。また、これまで毎週行ってきた対面でのミーティングをzoomなどのオンライン会議に切り替えました。このように工夫を重ねることで、大会までに必要な準備を完了させることができました。
 今年度大会は、オンライン審査による静的競技のみで完結しました。事前提出資料と審査当日オンラインでの質疑応答で審査を行うという方法が取られました。デザイン審査では9位を獲得しました。2019年度大会での15位よりも順位を上げることができましたが、まだ満足のいく結果はとれていません。今年度は車両完成が遅れたため、大会までに十分な走行会を行うことができませんでした。そのため、製作した車両を使っての検証が行えていないことが高得点をとれなかった原因の1つと考えています。来年度は設計の理論づけ、そして実測による検証に重きをおいて取り組んでいく予定です。コスト審査では2位を獲得しました。コスト審査でのリアルケースシナリオという項目で大きく失点してしまいました。この点については、準備不足と前任者からの引継ぎ不足が原因に挙げられます。対策を講じて来年度は1位を目指して取り組んで参ります。プレゼン審査では2位を獲得しました。これは目標としていた点数を超える結果となりました。オンラインで審査が行われるということで、本番に近い環境で練習ができました。また、卒業生や顧問の先生にプレゼンを聞いていただくことで、フィードバックを活かすことができ、このような結果につながりました。そしてこれら3種目の合計で、神戸大学が総合優勝を果たしました。
 弊チームの活動にご理解、ご賛同いただきまして誠にありがとうございます。機械クラブの皆様に多大なご支援ご声援を頂きまして総合優勝を掴み取ることができました。チーム一同心より感謝申し上げます。今後とも私たち神戸大学学生フォーミュラチームFORTEKをよろしくお願いいたします。