令和4年度機械クラブ 六甲祭協賛講演会(報告)
 開催年月日 : 令和4年10月29日(土)13:00-13:50       
開催場所 : 工学部本館 5W-301およびZoomによるオンライン開催 

恒例の機械工学先進研究講演会が開催されました.例年は六甲祭に合わせて開催している『機械工学先進研究』講演会ですが,今年はホームカミングデイに合わせて開催されました. 今年度は,菅野 公二教授を講師に迎えて,講演会を行いました.

                 
◆講演会…「機械工学先進研究」紹介 (司会:白瀬 敬一 教授)
○講演題目:光ナノテクノロジーが実現する高感度センシング技術
○講  師: 菅野 公二 教授
講演内容
 菅野公二教授が現在取り組まれている光ナノテクノロジーが発現する特異的な特性を応用した次世代センシング技術について,ご講演をいただいた.
 安全・安心な高付加価値社会を実現するためには,環境や周囲状況,からだの情報を手軽に取得できるセンシング技術が重要である. 金で作られるナノ構造を制御することで光と構造,物質を強く相互作用させ,特定波長領域の光を強く吸収することができる. この性質を利用した超高感度バイオセンシングおよび光センシング技術を紹介いただいた.
 はじめに,研究で目指している社会のビジョンについてご紹介いただいた. マイクロナノセンサによる高感度センサの実現によって,これまで見えなかったものを見ることができる. 例えば,我々の日常生活においては,食品の腐食状態や毒性を検出したり,自動車で路面状態を判別したりすることができるようになる. また,医療の分野では,からだの状態を判別することや,遺伝子検査によるがんリスクを把握することが可能となる.
 次に,2つの研究事例について,ご紹介いただいた.
 1つめの事例では,表面増強ラマン分光分析技術について,ご紹介いただいた.
 センサの高感度化のためには,光の散乱光を増強する必要があり,金ナノ粒子の配列を制御することで,高感度化につなげることができる. また,粒子と粒子の間と偏光方向を合わせることで,電磁場が大きくなり,感度が高くなることをご説明いただき,金ナノ粒子を配列したデバイスの作製方法についてもご紹介いただいた.
 2つめの事例では,機械共振型短波長赤外分光分析デバイスについて,ご紹介いただいた.
 赤外光検出において,一般的に使われているSiフォトダイオードでは,短波長赤外光検出を計測できないため,現状では,InGaAsフォトダイオードが使われているが,大型,高コストが課題となっている. そこで,オンチップ型短波長赤外分光センサの実現を目的として,MEMS技術を用いた機械共振型デバイスによる分光デバイスを開発し,共振周波数の変化から光の波長を検出可能となったことをご説明いただいた.
 最後に,現在所属している未来医工学研究開発センターの取り組みの紹介と,令和5年度から始動する医工学連携の新専攻の紹介と併せて,今後の研究の展望についてご説明いただいた.
 センシング技術は今後ますます期待できる技術ということがわかり,非常に興味深いご講演であった.
(文責:M56西田)