令和6年度機械クラブ「先輩は語る」講演会(報告)
併催:機械クラブ国際活動奨励賞報告会
学生自主活動支援金贈呈

日 時:令和6年5月8日(水)8:50 〜 10:20
場 所:神戸大学百年記念館 六甲ホール
司 会:浅野 等 教授

講 演 会
講演題目:
講  師:
略  歴:
「とある機械エンジニアが鉄鋼業界で歩いた足跡」
荒川 哲矢 氏 (JFEスチール (株))
1997年3月 神戸大学工学部機械工学科卒業
1999年9月 神戸大学大学院工学研究科博士課程前期課程修了
1999年4月 川崎製鉄入社
現  在  JFEスチール(株)
講演内容
 初めにご自身の略歴をご紹介された.大学・大学院時代は,熱流体系研究室に所属して, 微小重力場における気液二相分離技術に関する研究に従事されていた. 川崎製鉄入社後は西日本製鉄所に配属され,18年間主に電磁鋼板製造に関する業務に従事され, 現在は東京本社で企画事業などに従事されていることが紹介された.
 次に,鉄鋼に関する現状と今後の展望についてご説明いただいた. 鉄鋼は強度を含めてまだまだ開発の余地があり,現状では理論的に到達可能な強度の1/3程度であることが紹介された. これまでの鉄鋼の進化の一例として世界的な塔の幅に対する高さが2.6(エッフェル塔),4.2(東京タワー), 9.6(スカイツリー)と変化し,より細長い塔の建設が鉄鋼の進化により可能になっており, 鉄鋼の進化は社会の進化につながることが強調された.自動車分野においては,ハイテンと呼ばれる加工性が高く薄い高強度鋼板, 低電力損失である電磁鋼板などが利用されていることが紹介された.また,鉄の価格は70 円/kg程度でありアルミの約1/3であることから, コストパフォーマンスが良く,様々な分野で使われていることが紹介された.国内の需要は頭打ちとなっているが, 世界的な需要は30年後には1.5倍に増えると想定されているとのことであった.
 次に,JFEスチールについてご説明いただいた.JFEスチールは2003年に川崎製鉄とNKKが経営統合して誕生した会社であり, 年間約2500万tの粗鋼生産量があると紹介された.西日本製鉄所には福山地区と倉敷地区があり, 倉敷地区の南北間距離は神戸大学の六甲台キャンパスから六甲アイランドまでに匹敵する非常に大規模な製鉄所であるとのことであった.
 次に,動画も交えながら鉄鋼の製造過程をご説明いただいた.鉄鋼の原料,高炉による銑鉄の取り出し, 不純物除去や成分調整を行う転炉,圧延などが紹介された.一番薄い製品の厚さは紙の厚み程度とのことであった. 写真や動画では伝わらないところもあるので,是非工場に見学にきていただきたいとのことであった.
 次に,製鉄会社における技術系職種の業務やご自身のキャリアについてご紹介いただいた. 技術系職種としては研究開発(素材開発,利用技術開発),製造技術開発,設備技術開発があり, 自分自身がどのような分野に興味があるか今のうちから少しずつ考えておいたほうがよいとのことであった. ご自身のキャリアとしては,入社から4年目までは工場に所属しており,2年目は製造ライン所属の掛員(主にトラブル対策), 4年目には技術室の掛員として新規設備の建設や操業改善に従事していたとのことであった. その後は,新規設備建設のための計画立案などに従事されてこられたとのことであった.このような, ものづくりの基本を習得してこられた結果,近年予算規模としては年間数百億円となる生産規模拡大のための 新規工場建設の責任者を担当されたとのことであった.現在は,海外での製品製造にも携わられており, 海外パートナー企業とプロジェクトを進めているとのことであった.
 鉄鋼エンジニアの魅力して,製造設備が大きくダイナミックな製造プロセスに携わることができる点, 自身で建設した設備が何十年にもわたって製品を製造するという点,プロジェクトの計画から製品製造まで 携わることができる点であるとのことであった.鉄鋼業において仕事をしていく上で機械工学に関する基礎知識は必要不可欠であり, 材料力学,機械力学,熱力学など機械工学に関する知識を深めて機械工学のスペシャリストになり, 電気や化学などの他分野のスペシャリストと新しいものを作り上げてほしいとのことであった. また,海外の方と仕事するためには英語が必須であるため,英語を使う機会を意識して増やしてほしいとのことであった. 最後に,大学時代は自分自身でコントロールできる時間が多くあるので,その時間を使って大学時代に何か打ち込んだと言えるものを 築いてほしいとの思いが伝えられた.
 聴講した新入生(約120名)のうち,3名から就職先選定など質問があり,関心が高く今後の勉学が期待された.
(M57 栗本)
機械クラブ国際活動奨励賞報告会
令和5年度受賞者(所属学年は受賞当時):
川畑 祐人 君(大学院工学研究科 博士課程後期課程1年)
春名 進佑 君(大学院工学研究科 博士課程前期課程1年)
高森 遼   君(大学院工学研究科 博士課程前期課程2年)
中家 岳人 君(大学院工学研究科 博士課程前期課程2年)
前田 紗奈 君(大学院工学研究科 博士課程前期課程2年)
森本 龍人 君(大学院工学研究科 博士課程前期課程2年)
 
「先輩は語る講演会」とともに機械クラブ国際活動奨励賞報告会が併催された. まず,川畑君,春名君から参加した学会の様子や,学会にて発表した研究内容の紹介が行われた. 高森君,中家君,前田君,森本君については当日参加できなかったため,預かった資料の紹介を浅野教授から行われた. いずれの報告でも,国際会議において発表することにより得られた達成感が感じられ, 学部・修士と努力することにより国際会議での発表のチャンスをつかめるという点や, 発表の準備をする過程が大変であるが大事である点が強調されていた.
 学生生活を楽しみながら,弛まぬ努力を,という先輩学生からのメッセージであった.
       
川畑 君            春名 君          
(M57 栗本)
学生自主活動支援金贈呈
最後に学生自主活動支援金贈呈が行われた.機械クラブ玉屋会長から学生フォーミュラチーム(FORTEK)および レスキューロボットチーム(六甲おろし)に対して,支援金が贈呈された.
       
(M57 栗本)