03月26日 2023年度 総会記念講演(報告)

令和5年度神戸大学機械クラブ総会

総会記念講演会

講  師
 新明和工業株(株)石丸寛二氏

開催年月日
 令和6年3月26日(火) 15:00-16:10
開催場所
 工学部本館5W-301
出席者
 対面47名,Zoom参加アクセス15(研究室から多数参加)

 新明和工業株式会社 石丸寛二 氏 (1982年神戸大学工学部生産機械工学科卒P(11))を講師に迎えて, 記念講演会を開催し,対面およびZoomでの配信によるハイブリッドにて多数の卒業・修了生,教職員ならびに会員が聴講しました.
 なお,機械クラブ見学会として2017年9月,甲南工場を訪問し,大変お世話になっております.

◆講演
 航空機をツールとしたユニークな事業展開

(飛行艇の歴史、外洋救難飛行艇(US-2)の開発秘話、将来構想など)

講師
 新明和工業(株)
 取締役 副社長執行役員 石丸寛二 氏
 (1982年度卒P(11)

講演内容

 はじめに卒業生に向けて,お祝いのお言葉をいただいき,自身の自己紹介をされた. 「将来の夢は,エンジニアになって海外に行って仕事をする」と小学校のときに抱き,それがエンジニアとしての原点だったとのご紹介があった. 小学校から大学までボーイスカウト活動に取り組んでいるうちに,「航空機」「海外」の職業を志向するようになった. 就職活動をする中で,夢の実現のため,航空機部門への配属を期待して,入社することとなったことが紹介された.
 次に,会社の概要と歴史をご説明いただいた.100年の歴史がある企業であることが紹介された. 社の製品群は幅広く,航空機事業,特装車事業,流体事業,産機システム事業,パーキングシステム事業の大きく5部門に分けられ, 国内トップシェアの事業もいくつもあることが紹介された.ニッチ市場でトップシェアを誇る高い製品・サービス力が強みであることが紹介された.
 次に,飛行艇の歴史と現状についてご説明いただいた.まず,世界最初の水上機についてご紹介された. さらに,戦時下での飛行艇から戦後の飛行艇の歴史および現在の動向についてご説明いただいた. 飛行艇が衰退した理由としては,陸上空港が整備されたことや脚材料の開発が進んだことにより,陸上機に移行していったためである. 飛行艇は,重量や空気抵抗の面で不利なことと,運用環境が厳しく塩害などによるライフサイクルコストが高くなることが衰退する原因となった.
 そのような状況の中でも,飛行艇の開発を継続し,高耐波性能を強化した飛行艇(PS-1)を1990年代に開発した. さらに水陸両用能力を保有した(US-1A)を2000年代に開発したとのことだった.
 企業理念としては,大きな投資をするのではなく,環境変化と顧客ニーズに答えることや,独創的技術と創意工夫で原型機に改良を重ねて, 新型機を創出することを大事にしており,失敗してでも試作をすることを大事にしているとのことだった.
 次に,戦中に開発された「紫電改」から戦後に開発した「救難飛行艇」が誕生するまでの歴史をご紹介いただいた. 「紫電改」は事実上「零戦」の後継機となる制空戦闘機といわれていた.終戦間際に突如登場し,米軍を驚かしたことが記録に残っている. 「救難飛行艇」の初代機PS-1(対潜哨戒飛行艇)からUS-1(対潜装備を取り下ろし,救難機に改造),3代目のUS-2(洋上救難能力の維持向上)に至るまで, US-1では自主開発を行い,改良を繰り返したことが紹介された.特に,外洋飛行艇とするために,高波での離着陸ができるまでの開発秘話をご紹介いただいた. ポイントは低速化でも高揚力を発生することができたことである.
 続いて,US-2の開発プロセスについて,ご説明いただいた.他の製品開発でも通ずる開発プロセスであることをご説明いただいた. 自身では,年間1,000件くらいの大きな不具合を対応するような時期も経験したが,それを克服できたのは,やはり飛行機が好きだからということが述べられた.
 最後に,飛行艇の将来構想をご説明いただいた.過去の大震災を経験して,救難飛行艇だけでなく,消防飛行艇として,放水能力を搭載した飛行艇の開発を進めており, 燃料タンクを水タンクに変更して,高い放水能力を持った飛行艇の試験をすでに開始していることがご紹介された.
 最後に卒業生に向けて,メッセージが送られた.「Dream&Passion」をキーワードに夢と情熱をもってほしいとのことが伝えられた. また,夢から逆算してBackcastingすることが大事であることが伝えられた.また,「Big Picture, Small start」でものごとを始めることの重要性が伝えられ, さらに,まずは肯定するから始めることが大事であることが伝えられた.以上のような激励のメッセージがあり,講演を締めくくられた.

(文責:M56西田)

写真1 石丸寛二氏 

写真2 講師紹介

写真3 聴講状況

写真3 聴講状況

写真4 説明状況

写真4 説明状況