09月27日 2024年(令和6年度)神戸大学 機械クラブ 見学会(報告)
「オムロン草津事業所」見学
毎年1回開催されている機械クラブの見学会が9月27日に実施された。今年は、オムロン殿にご協力頂き、事業収益の約半分を占める制御機器事業(IAB: Industrial Automation Business company)の中核となる草津事業所を訪問した。会社概要および事業所に関する説明の後、工場内を見学、質疑応答を実施頂いた。本見学会は機械工学専攻との共催で実施しており、今回は学生3人を含む、14人が参加した。学生参加の見学会は2018年以来。
〔報告者:見学部会 M30 尾野守 M31山村佳成〕
会社および草津事業所概要設明
オムロン株式会社は、1933年に立石一真氏が「立石電機」として創業された。創業者が制定された社憲「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」のもと、「ソーシャルニーズの創造」「絶えざるチャレンジ」「人間性の尊重」を企業理念とされている。草津事業所ではFA(ファクトリオートメーション)用の制御機器を生産しており、作業者が能力を最大限に発揮できる自働化を展開され、超多品種少量生産対応を行っている。
工場見学
見学に際し、工場のライン配置コンセプトについて、「ラインは美しくなければならない」「それにより、流れや変化、異常を見る事ができる、今後の戦略を見る事ができる」との説明があった。以下の見学各ラインとも作業高さや、設備配置が見事に統一されていた。
商品展示、ライン概要説明の後、3つのテーマ①プリント基板の表面実装工程(SMTプロセス)を可視化するIoT(Internet of Things 物のインターネット)活用②異機種の組立ラインを統合する協調自動化③搬送工程を活人化するモバイルロボットの活用について説明いただいた。
① SMTプロセスを可視化するIoT活用
停止ロスの見える化と生産現場の見える化を行うため基板1枚単位ごとにどのように、どの場所で、どれくらいロスが発生しているかをデータ取り、分析を行い、そのロスが、人によるものか、設備によるものかの要因を見える化を実施し、ボトルネックの特定、改善により生産性向上を実施。また、不良低減措置として、はんだ印刷、部品実装、はんだ付けの各工程終了時に画像による検査を実施し、不良品を次工程に流さない工夫を実施。それらの改善によりPPbレベルの工程不良、目視検査工数の削減により少人数での検査が可能となった。
解析に関するソフトウェアはMESと呼ばれる社内開発ソフトをベースに、Visualine、Qup へと、全て社内部署で開発・ブラシュアップされてきている。
② 異機種の組立ラインを統合する協調自動
オムロンでは多品種少量生産に対応するため、ロボットを人と同じセルに配置し、ロボットが人と協調する生産システムCLCS(Cell Line Control System)が展開されている。選ぶ、取り出す、確認する、手元に運ぶなど自動化が効果的な部分はロボットが行い、位置を合わせる、組付ける作業等は人が行うなど、人とロボットの協調を図っている。
また、IoTを活用した異常作業の検知により、ねじ締め忘れ防止や工程飛ばし時の機械停止など不良を発生させることができないラインを実現している。
③ 搬送工程を活人化するモバイルロボットの活用
生産ラインにおける多品種の部品を需要変動に対応し搬送する作業は、身体的負担だけでなく、熟練が必要な作業であるが、その作業を自動搬送システムによるモバイルロボットを活用。さらに、からくり機構により動力を用いず、無人作業で積み下ろしを行う等々で、活人化を実施。
質疑応答
工場見学後の質疑応答では、自動化ラインでの作業者の心のケア、様々なからくりの開発部署、カンバン方式の導入への考え方、ハンド治具に関する指型ロボットの応用について等、様々な質問があり、各質問に対して、具体的に、丁寧に、判りやすく、ご回答頂いた。
親睦会
新型コロナ蔓延より昨年度実施を控えていた親睦会をJR草津駅近くの会場で実施した。見学会の話題、各人の近況など学生の方も交え、親交を深めることができた。
謝辞
今回、オムロン株式会社草津事業所の見学について、ご提案頂いたオムロン代表取締役副社長の宮田喜一郎様、草津事業所へのお取り次ぎを頂いた諏訪執行役員 知財・技術本部長様、受け入れ頂いた草津工場の皆様に対し、この場をお借りし深謝いたします。
以上