12月07日 第7回「機械技術者生活を語る座談会」(報告)
2024年12月11日
座談会部会長:井宮 敬悟
開催年月日 : 2024年12月7日(土) 15:45-17:15
開催場所 : 工学部本館5W-301会議室
親睦会 : 17時30分~19時 工学部構内AMEC3
出席者
学 生 :(M1・B4)16名、(フォーミュラーチーム)2名、(レスキュー六甲おろし)2名 計20名
機械クラブ会員 :22名(内オンライン6名)、
教 員 : 5名
合 計 :47名
(1) 発表状況
・発表テーマ:
「パナソニック環境エネルギー分野における40年の研究開発の足跡」
・発表者・略歴:
P(7) 西脇 文俊様
1983年3月 神戸大学大学院
自然科学研究科博士課程修了
同年4月 松下電器産業(株)
(現パナソニック(株))入社
学部、修士では赤川研究室でヒートパイプの研究を行い、博士課程では坂口研究室で気液二相スラグ流の研究を行う。パナソニック入社後は熱流体分野の研究やデバイス開発、代替冷媒技術開発、NEDOプロジェクト等に従事。
・発表概要
1.はじめに
・パナソニックとトヨタの経営理念を比較して共通点が多いことを示し、産業報国が企業の存在価値と考えられ、パナソニック創業者の社会貢献の例として多くの政治家を輩出している松下政経塾や浅草寺雷門、梅田新歩道橋の寄付の例を挙げられた。
・時価総額で見た企業価値の変遷や、入社後の離職率から見た就社から就職への意識の変化を説明し、技術者の流動化に伴い技術者のコア技術力向上が重要である旨を述べられた。
2. 40年間の研究開発歴
講演者が担当された下記①~⑥の業務の概要を説明し、それぞれの場面での研究開発で苦労した点や教訓を述べられた。
①エアコン用高性能伝熱管の開発
・伝熱管内面形状を工夫したが、特許化できず。
②熱電変換材料の開発
・論文に掲載されていた薄膜熱電材料を成膜したが、初期の性能が得られず、論文での計測法にミスがあった模様。必ずしも論文が正しいとは限らない。
③代替冷媒向けトライボロジー技術の開発
・専門外であったトライボロジーの分野で人的ネットワークを作り、開発に役立てた。
④自然冷媒ヒートポンプの開発
・ヒートポンプを使ったエコキュートは累積出荷台数9百万台に達しており、ヒートポンプは洗濯機に内蔵する乾燥機やEVの熱マネージメントにも適用が進んでいる。
⑤未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発プロジェクト
・1次エネルギーの6~7割が未利用熱エネルギーとして環境中に排出されており、その中でも200℃以下の未利用熱が大量に排出されている。それに着目したMETI・NEDOプロジェクトが2013年から立ち上がっており、パナソニックでは高密度・長期蓄熱技術や排熱発電技術に取り組んだ。
⑥低GWP冷媒技術の開発
・冷凍空調機器に用いられている冷媒によるCO2排出量を低減することに取組んでいる。
3. 知財の重要性
・知財は技術開発動向、戦略を調査するだけでなく、自社技術、事業を保護する観点から重要である。企業での研究開発では年収相当額の発明報奨金を得ることもある。
4. 40年の振り返り
・目標、夢を描き続けると実現できる
・参加した方からの質問、ご意見
・欧州のヒートポンプ事情の説明の中で、最近売れなくなっているとの説明があったが、その理由は?
(西脇)補助金の削減や天然ガス価格の安定化で、ロシアのウクライナ侵攻直後のようなバブルはなくなったが、需要は継続している。
・国内需要はシュリンクしており海外向け製品が主になっていると思うが、研究開発体制はどうなっていますか。
(西脇)パナソニックでは、中国、米国、インド、ドイツ等に研究開発拠点があり、最近ではドイツで開発したA2Wヒートポンプを発売している。
・既存のエアコンに入っている(GWPの高い)冷媒はどうするのか。
(西脇)開発されている低GWP冷媒は新規製品に適用して行くので、既存製品と新規製品の混在を前提にCO2排出量のシミュレーションを行っている。
冷凍空調機器の冷媒の総量は新規充填分とサービス充填量の合計なので、サービス充填量を減らすために、漏洩を減らすことが重要である。また、回収した冷媒を再生して再利用することを進めている。ルームエアコンの正規ルートでの機器回収率は41%(2022年度)で残りは産廃業者等に渡っていると考えられるので回収率アップが課題。 (機器回収率に拠点冷媒回収率を掛けた冷媒回収率は30%台と低い値である)
・その他アンケート結果
対面で出席された皆様より33名の方(回収率83%)にお答えいただき貴重なご意見を頂きました。
簡単に報告させていただきます。
・出席してよかったと回答された方が88%あり、継続して参加されると回答された方も73%と多くの方に興味を持ってもらえました。
・その中では、ヒートポンプに関わる技術の話で割と身近な製品でわかりやすかったし、技術者としてのあるべき姿勢や就社ではなく就職、ビジネスに就くという教訓を述べられ技術者としての心構えを聞けて良かった。
・就職活動を行っている学生も多く、学生のためになったのではないかといった意見もいただきましたが、一方では、話題提供者と学生のディスカッションできる時間が短くもっと時間を設けた方が良いといった意見もいただきました。
(2)親睦会の状況
座談会の講演終了後、工学部南側AMEC3にて親睦会を開催しました。先生方、機械クラブの会員と学生たち合計29名が4つのテーブルに分かれて和気あいあいとした懇談をすることができました。座談会では学生と話題提供者の意見交換をする時間が短かったですが、親睦会の中でOBの方も交えて学生たちとの親睦ができ、とても楽しいひと時を過ごすことができ、大変有意義な親睦会となりました。
(3)集合写真
(4)最後に
第7回「機械技術者生活を語る座談会」も多くの学生たちと懇談ができ、非常に有意義な時間を持つことができました。出席された方からの貴重な意見も参考にして、座談会部会をさらに活性化していきます。
ご多忙にもかかわらず、本座談会への話題提供を快くお引き受けいただきましたP⑦西脇文俊様を始め、ご協力を頂いた先生方や機械クラブ会員・役員の皆様、そして各種役割、作業分担頂いた座談会部会の皆様のご協力に心より感謝申し上げます。
今後も座談会部会の活動に、多数の方に参加していただけるように企画運営していきます。
本当にありがとうございました。